「今年来年は自然体やな。しょうがないやろ」ーー伊藤忠商事の岡藤正広会長兼CEOは3月、大阪市内で実施された一部のメディア向けの記者懇談会で、こう語った。伊藤忠商事は21年3月期を発表した昨年5月末、純利益、株価、時価総額の、いわゆる3分野で総合商社3冠を達成したものの、22年3月期はそうは行かなそうだ。その大きな要因になるのが「ウクライナ危機」だ。ロシアの侵攻により、急速な資源高になり、三菱商事や三井物産など資源に強い財閥系商社の収益を押し上げる。繊維出身で2010年4月に社長に、18年4月に会長CEOに就任。同社のトップになって12年目になる。伊藤忠を名実ともにトップに押し上げた辣腕CEOが「商社論・繊維・これから」を語った。
伊藤忠商事の22年3月期の純利益の見通しは過去最高の8200億円。ライバルの三菱商事も同様の数字を発表しているものの、ウクライナ危機に伴う資源高が寄与して、ほぼ確実に大きく上回る見通し。3月28日(月)の株価は伊藤忠の4117円、時価総額6兆6200億円に対して、三菱商事が4668円、時価総額は6兆9400億円。両者とも年初来の最高値を更新しているが、三菱商事の方がより上振れており、確実に伊藤忠を上回りつつある。
岡藤正広会長CEO(以下、岡藤):商社はずっと株が割安と言われてきた。伊藤忠が学生や業績でトップクラスにおっても、時価総額でみるとまだ上位10社にも入ってない。その理由の一つが、商社の業績のボラタリティ(変動性)の高さや。だからどの商社もこの数年は、DX(デジタルトランスフォーメーション)やEX(エネルギートランスフォーメーション)、脱資源、縦割り組織からの脱却などに取り組んできた。時代に合わせて体質改善、ビジネスモデル改革をやってきたわけや。それがウクライナ危機で全部ひっくり返った。異常な資源高で、資源に強い商社の利益を大幅に嵩上げする。伊藤忠も(純利益見通しが)8200億円と、過去最高の見通しだが、資源に強い財閥系の商社はそのさらにずっと上を行ってしまう。これでは商社の構造改革は後戻りしかねへんわな。
定期購読についてはこちらからご確認ください。
購⼊済みの⽅、有料会員(定期購読者)の⽅は、ログインしてください。