2023年春夏のテキスタイルトレンドはサステナビリティを追求しながらも感性に訴えかけるような大胆なデザインが広がりそうだ。サステナビリティは原料、染色や加工の方法の持続可能性だけではなく、資源循環を考慮した素材開発にまで発展していく。テキスタイルのプロである梶原加奈子カジハラデザインスタジオ代表に最も影響力があると言われている世界最高峰の素材見本市プルミエール・ヴィジョン(PREMIERE VISION、以下PV)の傾向をベースに、23年春夏向けのテキスタイルの傾向を聞いた。
WWD:PVの2023年春夏向けの傾向は?
梶原加奈子(以下、梶原):理性と前向きな感情のエネルギーが混じり合い、相反する概念が対話するシーズンになりそうです。
WWD:というと?
梶原:理性とはサステナビリティを指し、前向きな感情のエネルギーはクリエイションを指します。例えば、スローダウンvsスピードアップ、バーチャルvsリアル、空想vs物質、内面の充足vs外見重視など相反するものが同化していくイメージが大切になります。これまで対立構造にあった、流行を追うファッションの楽しみと社会責任を意識した製品開発、2つのアプローチに橋を架けるような自由な発想が求められています。それは、感情、常識、直感の快適なバランスを楽しく構築していこうというメッセージともいえます。もう一つ、“ヒーリングテクノロジー”がニューワードとして出ていて、ヒーリングのためにテクノロジーを活用しようという提案もありました。
WWD:具体的にどのようなコンセプトが打ち出されていましたか?
梶原:3つありました。1つ目は“サステナブル×プラグマティック×クリエイション”として、環境の持続可能性を考慮しながら、前向きで合理的な考えと、感性に訴えるような独創的で大胆なデザインをバランスよく融合することを目指そうというものです。サステナブル素材といえば、心地よいシンプルなものが多かったですが、これからはクリエイションに振っていくイメージです。
2つ目は“相反する概念の共存×視覚に瞬時に訴える力”。これは単純な共存というよりは、消費者のライフスタイルやニーズ行動の変化に対応するために相互を補完するようなイメージで、具体的な手法でいうと、パッチワークデザインやムラ柄、プリントの重ね合わせ、複雑なプリント、刺しゅうした後にプリントするなどが挙げられます。
そして3つ目は“サーキュラーエコノミー×水”。資源循環を重視した素材開発、リアルとバーチャルの一体化などを指しますが、それらのインスピレーション源は、絶えず変化しながら循環する水です。23年春夏向けは、資源循環など具体的な提案というよりは、地上の生命を潤す存在が大きなデザインテーマになっていて、水を想起させる青を基調とした意匠が多かったですね。
エコをイメージさせる色は緑から青へ
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