国内最大級のふるさと納税総合サイト「ふるさとチョイス」を運営するトラストバンクの須永珠代会長兼創業者は4月5日、「地域経済の自立と文化の継承・発展」を掲げるAINUSホールディングス(以下、アイナスHD)を立ち上げた。アイナスHDでは食、旅、伝統技術の3軸にフォーカスし、各分野で新会社を設立。伝統技術の分野では、ヨウジヤマモトや仏エルメスのデザインチームで経験を積み、現在は日本の伝統織物を使って受注生産で洋服を仕立てるブランド「アルルナータ(ARLNATA)」を手がける寺西俊輔とタッグを組んでいる。
アイナスHDと寺西とのジョイントベンチャーの形で、アイナスHD傘下にMIZENを設立した。出資比率はアイナスHDが95%、寺西が5%。MIZENは日本各地の伝統織物などを職人から仕入れ、それを洋服やライフスタイル雑貨に仕立てていく。それらを「ふるさとチョイス」の返礼品として選べるようにすると共に、「それ以外の販売先、特に海外販路の開拓にも力を入れたい」と須永アイナスHD社長は話す。
須永社長は、日本の伝統的繊維産業について「最盛期の1980年代でも産業規模は5000億円台だったが、今や1000億円台と聞く。欧州のラグジュアリーブランドでは、売上高が1兆円を超える規模も珍しくない。なぜ日本にはラグジュアリーブランドがないのか」と課題を指摘。MIZENでは、「日本中に“個”のラグジュアリーブランドを創出する」「職人の上にブランドが立つのではなく、職人というブランドとMIZENが組むことで新しい価値を生む。消費は投資になり得るという考え方を世の中に浸透させていきたい」と寺西俊輔MIZEN社長は話す。
須永社長は、12年に資本金50万円でトラストバンクを設立。ふるさと納税が盛り上がる中、18年にトラストバンクをチェンジに売却し、20年に代表権のない会長に就いた。「『ふるさとチョイス』を運営する中で、地方にはすばらしい産品や文化があるが、資本がないがゆえにそれらを流通させることが難しいケースを数多く見てきた。トラストバンク売却で得た資金をそこに生かしていく。ふるさと納税は今非常に盛り上がっている。(一方で返礼品競争のような面もあるが)アイナスHDではふるさと納税に限らず、さらに本質的に地方を盛り上げていきたい」と須永社長。
アイナスHDでは、食の分野では自然栽培による“生態適合農業”を推進するネークルを傘下企業として立ち上げ。旅の分野では、富裕層向け宿泊施設を地域住民を巻き込みながら運営するUI(ユイ)を立ち上げた。UIでは23年春をめどに、鹿児島・徳之島に宿泊施設をオープン予定という。アイナスHDにはトラストバンクも5%出資している。