ブランド品などのリユース事業「ブランディア(BRANDEAR)」を運営するデファクトスタンダード(東京、仙頭健一社長)は、海外での販売を強化する。米国、欧州、中国、東南アジアなどの有力なマーケットプレイスに出店し、世界的に高まりを見せるリユース市場での存在感を高める。経営トップとして海外戦略の旗を振るとともに、自ら中国向けのライブコマースにも出演する仙頭社長に聞いた。
WWD:ブランド品のリユース企業は多いが、デファクトスタンダードの強みは?
仙頭健一社長(以下、仙頭):ブランディアはお客さまの自宅の不要品を宅配で送ってもらうスタイルで始まった。段ボール箱1個に20点前後の品物が詰められて届くことも珍しくない。いかにスピーディーに査定し、いかに効率よく出荷の準備に持っていくか。しかも中古品なので品物もコンディションも一つ一つ異なる。1日1万点以上の品物を手際よくさばく。そのノウハウは当社ならだと思う。
WWD:高級バッグ、アパレル、時計、ジュエリー、服飾雑貨まで取り扱うアイテムは幅広い。
仙頭:価格帯(小売価格)は1000円台から1000万円を超えるものまである。カジュアルブランドからハイブランドまで7000ブランド以上取り扱う。正直にいって面倒くさい(笑)。(他社のように)高級ブランドに絞った方が楽だけど、これまでに延べ300万人以上のお客さまに利用されてきた。お客さまが望む幅広いリユース品の売買で、循環型消費の促進に貢献していきたい。
WWD:コロナによる影響はあるか。
仙頭:宅配買い取りの利用者は増えた。巣ごもり生活の浸透によって断捨離の意識が広まり、使っていない品物を現金化したいというニーズが高まった。一方、販売については苦戦している。当社はブランド品が主力なので人と会う機会が減ってしまうと購入意欲が落ちる。
WWD:売りたい意欲は高いけれど、買いたい意欲は低い。
仙頭:当社に限らずファッションカテゴリーは一部を除き厳しいと認識している。でも海外での販売は順調に伸ばしている。デファクトスタンダードは(20年に)BEENOSの100%子会社になってから戦略転換した。「海外強化」と「高単価シフト」の2本柱の戦略を推進する。
これまでは国内で買い取った品物を国内で販売していた。だが、今後の日本の人口減少を考えれば、リユースへの熱量が高まる海外市場に打って出るべきだと判断した。リユース企業では買い取ったものをtoB(企業)に売るか、toC(消費者)に売るかの2通りがある。当社の場合は元々の強みであるtoCの市場を海外でも取っていくことを選んだ。海外の有力マーケットプレイスを通じて販売する。販売における海外比率はそれまで6%程度だったが、直近(21年10〜12月期)は24.4%に高まった。比率だけでなく、具体的な数字はいえないが海外のトップライン(売上高)自体が伸びている。25年には50%を目指している。
WWD:もう一つの柱である高単価シフトの理由は?
仙頭:これもシンプルにいうと海外で売るためだ。シッピングコスト(輸送費や関税など)を勘案すると、海外では高単価の品物でないと採算が合わない。海外のお客さまに購入のメリットを感じてもらうためには高単価シフトが欠かせない。そのため宅配買い取りだけでなく、買い取り専門店やオンライン査定を通じて、高単価の品物を集めるように努めている。
WWD:リアルの買い取り専門店は3月にオープンした京都四条河原町店で11店になった。
仙頭:今期(22年9月期)には計15店舗になる見通しだ。高単価シフトの戦略に基づけば、対面で接客しながらていねいに査定するプロセスが大切になる。宅配買い取りは便利だけど、何十万円の高額品を宅配で取り引きするのに抵抗を持つ方は多い。宅配買い取りと店舗買い取りでは、買い取り単価が10倍も違う。またオンラインでも人を介した査定が行える「ブランディアベル(BRANDEAR BELL)」も運営している。オフライン、オンライン問わずに買い取りの間口を広げている。
WWD:海外販売はどこで伸ばしている?
仙頭:既存チャネルと新規チャネル両方で伸ばしている。もともと出店していた米国のイーベイ(E BAY)、新しく取り組みだした欧州の仏ヴェスティエール・コレクティブ(VESTIAIRE COLLECTIVE)、中国のTモールと京東全球購(JD WORLD WIDE)、東南アジアのショッピー(SHOPEE)など。高級時計専門のドイツ初のマーケットプレイス「クロノ24(CHRONO24)」にも出品を開始した。現状は米国4割、欧州2割、中国2割、東南アジアその他2割くらいになる。伸び代はどこも大きいが、特に中国は新品市場に比べた中古品市場の比率が5%程度と言われており、飛躍的な成長が見込まれる。国や地域、マーケットプレイスごとにコミュニケーションは異なる。柔軟に対応することが大事だ。例えばイーベイでは価格に対するリクエストが細かい。
WWD:日本を拠点にするメリットはあるのか。
仙頭:希少な高級ブランド品をお持ちのお客さまが多い。大事に扱われているためコンディションがいい。商品のコンディションは販売価格に直結しており、それだけ良い品物が確保できる。特に中国のお客さまはコンディションを重視し、日本からの出品に安心感がある。米国のお客さまは傷や劣化の具合をきちんと説明し、価格に納得すれば買ってくださる。同じコンディションのものなら、日本よりも海外の方が高く売れる。
WWD:蓄積された膨大なデータが武器になる。
仙頭:その通り。オークションサイトであれば、どのような商品がいくらで落札されたか。この販売データが蓄積されると、どこの国・地域のマーケットプレイスにどの商品を出品するか見極められる。求められるものを高く買い取ることも可能になり、結果として買い取りのお客さまにも還元できる。まず高く買い取ることがお客さまの最大の願いであり、そこから逃げてはいけない。そして企業としてサステナビリティへの姿勢も明確に打ち出す。数ある買い取りサービスから「ブランディア」が選ばれるようになる。そんな好循環が生まれる。
WWD:親会社BEENOSとの連携は?
仙頭:BEENOSは日本の越境ECのリーディングカンパニーといってよい。グループの中核会社tensoを筆頭に日本から海外、海外から日本といった越境に伴う言語、決済、情報、物流、商習慣などの課題を克服するノウハウを持ち合わせている。海外のマーケットプレイスにつなぐだけは売れない。それぞれの国の事情に合わせた最適な販売戦略を確立できることが、グループとしての強みだ。