マッシュホールディングスはこのほど、グループ全体としてサステナブルな取り組みを加速するための社内組織「サステナブル推進委員会」を立ち上げた。傘下のマッシュスタイルラボ は大手繊維商社など10社と提携し、サプライチェーンにおける二酸化炭素(CO2)削減を目的とする「サステナブルアライアンス」を発足。各社の情報やノウハウを共有しながら環境に優しい原料調達・開発を進め、生産や流通においても独自基準に基づく工場監査を制定し、全社一丸で持続可能なサプライチェーンの構築を目指す。
アライアンスに名を連ねた繊維商社は三菱商事ファッション、豊田通商グループ、スタイレム瀧定大阪、田村駒、豊島、モリリンの6社。生産・流通ではザ・パック、東京アート、三景、ヴェストの4社。今後はアライアンスとして調達原料全体に占めるサステナブル原料の目標割合を定め、さらにその調達経路や背景などについても基準を設ける。「例えばリサイクルポリエステル素材であれば、その原料となるペットボトルはどこで回収され、再生されたものなのか。オーガニックコットンであっても、それがどういった背景で作られたものを採用するのか。CO2削減を最重要のアジェンダとして、これらに統一された基準を設ける」と近藤広幸社長。
取引先工場への監査項目は、今後具体化を進める。「ただ目標や基準を作ることに時間を割くあまり、動けずにいては本末転倒。まずはできることから地道に進めていく。例えば工場内のLED化や省エネ意識の向上などから始めてもいい。個々の取引先工場と向き合い、CO2削減につながるできる限りのアクションを起こしていくことが重要だ」。ゆくゆくはこれらの取り組みによるCO2削減効果を数値化し、グループ全体としてのCO2削減の数値目標を掲げたいとする。衣料品の回収・循環によるサーキュラーエコノミーの構築も視野に入れる。
アライアンスの設立は、岩木久剛マッシュスタイルラボ執行役員生産管理本部長の発案をきっかけに、近藤社長が指揮を執り実現した。「これまでマッシュとしてもサステナブル原料を使った商品企画などに努力してきたが、“点”の取り組みには限界がある。サプライチェーンの川上から川下まで関わる取引先と手を携えれば、その先にある幾多もの関連工場を巻き込み、業界の大きなムーブメントにしていくことができると考えた」(岩木本部長)。3月に行われたアライアンスの発足会議では、近藤社長自ら繊維商社各社の代表者の前に立ち、アライアンスの意義と目指す先を語った。「本来は競合関係にある取引先各社にアライアンス参画を促すことはとてもタフだった。だが最終的にはマッシュのカーボンニュートラルへの挑戦の本気度が伝わり、皆さんと同じ方向が向けたと思っている」(近藤社長)。
今後は加盟社を広げながら、行政への働きかけも視野に入れる。近藤社長は「われわれの取り組みが見本となることができれば、業界にとっても(サステナブルな方向へ向かう)大きな推進力になるはずだ。環境に配慮するというと、どうしても不便になる、コストがかかるといったネガティブなイメージがまとわりつく。だが新しい知識や概念を学びながら(環境に関わる諸問題を)解決していくことが『楽しい』とポジティブに感じられるようなムードを僕らで作っていきたい」とし、「それは社会に対するファッションの果たすべき役割でもあると思う」と語った。