アイウエア大手のジンズホールディングスは、国内での生産サプライチェーンの構築や、セルフ視力測定器の導入による店舗のスマート化と店舗オペレーションの効率化に着手する。デジタル購入体験のブラッシュアップも推進する。
4月8日に発表した2021年9月〜22年2月期決算は、売上高が327億円(前年同期比3.4%増)、営業利益19億円(同28.5%減)、経常利益21億円(同15.9%減)、親会社株主に帰属する四半期純利益は11億円(同38.8%減)と増収減益となった。国内アイウエアショップの既存店売上高は3.8%減、全店売上高は0.1%増。EC売上高は18.2%伸びた。アイウエアショップの店舗数は、国内451店舗、海外229店舗(中国173、台湾44、香港6、米国6)の計680店舗に。海外売上高は14.3%増の70億円で、売上高構成比は21.6%になった。国内の郊外・ロードサイド店舗が前年同期に比べて10店舗増えて55店舗となり、売上高は27%増加。今後も出店を強化する。
課題は販管費の引き下げだ。当期の売上高販管費率は72.3%と前年同期比で1.5ポイント増加。店舗での生産性を向上させるため、5月にセルフ測定器を大型店40店舗に導入する。視力測定の自動化により、特に週末のチャンスロスを撲滅して売り上げを伸ばす一方で、接客時間を創出して、シニア客を含めた顧客エンゲージメントの向上につなげていく。
また、オンライン売上高の増加に伴い、膨張しがちな集中加工センターのキャパシティは現状維持とし、店舗の空き時間に加工をすることで、店舗の設備や人員の稼働率を高める「分散加工体制」を徹底する。さらに、AIを活用した受注精度向上による在庫稼働率の向上にも取り組む。
田中仁CEOは、「ロシア、ウクライナ、コロナなど世の中が混沌としている中で、本質的な問いを立てて解を出すことが重要だ。もっとチャレンジしなければならない。人生100年時代、“ウェルシーイング”の時代に、まだまだ解決すべき課題がある」として、キッズプロジェクトやシニアプロジェクトを強化。さらに、コアターゲット層に対して、気に入った商品がすぐに手に入る「デジタル購入体験の革新」を推進する。
オリジナル人工知能の「ジンズ・ブレイン」では、顔型を細かく判別して似合い度を瞬時に判定し、店頭やオンライン上の在庫から似合うメガネをランキング形式でオススメする提案機能を追加するなど、さまざまな施策を積み重ねてているところ。「年内には革新的なサービスが生み出せると思う」と語る。
さらに、「“エブリワンズ・アイウエア”というブランド戦略を世界中に広げる。お客さまに対するLTV(ライフタイムバリュー)の向上と、お客様の母数を広げるために新規顧客を広げる。まだまだ余白はある。会社の将来の成長を確信している」と意気込む。
原価の高騰や円安などにより価格引き上げを行う企業が増加し、インフレが懸念されている。中村豊取締役CFOは「問題は円安だ。長期的には国内生産体制の確立が急務だ。すでに開始しているが、為替対策だけでなく、シニア対策も含めて、国内生産をフレキシブルに行うことが重要だ」と説明。
これまで5000円、8000円、1万2000円の3ライン制をとってきた価格政策については、「足元で、生活必需品が値上がりし、可処分所得が下がる中で、5000円のエントリーポイントは重要だ。5000円、8000円、1万2000円の上を出していく。国内生産体制の確立と密接にかかわってくると思う」として、国内生産のサプライチェーン構築を急ぐ考え。