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連載 進化する幸せ産業

カジュアル化で広がる若年層のゴルフブーム【ウィズコロナで進化する幸せ産業】

 私のゴルフ歴は、実は長い。高校生のときに近所のゴルフ練習場で受付のアルバイトをして以来、細く長く、なんとなくの縁を保っている。大学時代からのゴルフ仲間とたまに会ってもラウンドより飲む機会が多く、最近では中学や高校の同窓会代わりのコンペがあるくらい。ゴルフ関連の記事を書くこともあるが、トーナメントやギアに通じているわけでもなく、あくまでも旅やグルメの一環としての取材だ。コースに出るのは年に数回なので、スコアはさっぱりである。それでも、たまに仲間とああだこうだ言いながら回るのは楽しい。

スタイリッシュで実力も備えた若手ゴルファーが急増

 しかし今、ゴルフに夢中になる若い世代が増えているという。コロナ禍で旅行や外食を控える状況なので、“それに代わる娯楽=お金の使い道”になっているのだろう。しかも、競技志向の強いエントリーゴルファーが急増していると聞く。彼らはバブル遺産の金満なゴルフのイメージを払しょくし、スタイリッシュに塗り替えてくれた。

 もちろん、まねしたくなる若手プロの刺激もあるだろう。マラソンや卓球などほかの競技でも、モデルのような体形でセンスよくウエアを着こなすトップアスリートは注目されている。

 そしてコロナ禍での価値観や生活習慣の変化も影響している。ある大学生は旅行やカラオケに行きづらくなったことから、仲間うちでゴルフを始めたと語る。またコロナ禍でオンライン授業が増えて時間が調整しやすくなり、安い平日のラウンドを重ねることでスコアアップにつながったという声も。なかには始めて半年で週に数回コースに出るほど熱中し、スコア100切りを達成した猛者もいた。数値で上達を実感できるゴルフは、ゲームや競技としてハマる要素がある。

 これまでのゴルフは“ビジネスツール”であり“社交”だったのに対し、今のゴルフブームは“ゲーム”であり、旅行や会食の代わりになる“エンターテインメント”。上司に言われてしぶしぶ始めるのではなく、自らの意志で始めている。能動的なので、ウエアやギアにも手を抜かない。ビギナーとはいえ競技志向も強くなる。そんなエントリー層を後押ししているのが、各メーカーやメディアなどのゴルフ産業の取り組みだ。

ビギナーを誘いやすい“映える”クラブ風イベントも

 例えば、ゴルフダイジェスト・オンライン(以下、GDO)とゴルフ用品の「キャロウェイゴルフ(CALLAWAY GOLF)」によるCallaway Golf×GDO「一緒にゴルフはじめよう!」キャンペーン。計測器を兼ね、バーチャルラウンドなども可能なトップトレーサー・レンジ(以下、TTR)システムを導入したゴルフ練習場で4月末まで実施しており、「キャロウェイゴルフ」の最新モデルを貸し出すなど、ビギナーに本物に触れてもらう機会を作る狙いだ。

 同キャンペーンの一環として、神奈川県横浜市の「パームスプリングス ファミリーレストラン&ゴルフレンジ」では、エントリー層を対象にしたイベントも開催された。ゴルフ練習場の1フロアにDJブースを設け、クラブのようにライトアップしてTTRも体感できる。飛距離や目標への近さを競うドライビングコンテストも打席で行えるので、ゴルフ未経験者も気軽に試せる。1打席を最大4人でシェアし、軽食やドリンクを手にカラオケやボーリングのような感覚で盛り上がった。屋外で各打席が区切られているので、感染対策も万全だ。非日常的で“映える”空間なので、ゴルフにまだ興味のないビギナーでも気軽に誘いやすいメリットもある。

海外では常時イベント状態の「トップゴルフ」が盛況

 海外では「トップゴルフ」なるエンターテインメント施設が人気だ。通常営業時にも大音響でクラブミュージックが流れ、施設内にはバーも併設するなど、アトラクションとしてゴルフの打ちっぱなしを楽しんでいる。各打席に設置されているTTRにはゲーム感覚でプレーできるモードもあり、フィールドの的への打ち込む場所で得点を競うなど、楽しみながらアプローチの練習ができる。

 日本の「トップゴルフ」では、海外と同規模の施設をそのまま取り入れるのではなく、TTRを既存の練習場に導入することで、ゴルフ練習場のエンターテイメント要素を強化する施設が増えている。現在、スイング碑文谷など全国60以上の練習場で設置されているTTRは今後も広がるだろう。

さまざまな展開を試みる進化系ゴルフコースも

 練習場だけでなく、コースも進化を続けている。GDOが運営する「茅ヶ崎ゴルフリンクス」ではドレスフリーを実現。襟付き以外NGなどのドレスコードを廃止し、Tシャツやスエットなどのカジュアルウエアでもラウンドできるようにした。またキャディーを伴わない完全セルフプレーや途中休憩を挟まないスループレー、当日予約をOKにすることでシステムもカジュアル化。軽食はクラブハウスではなくコース内のキッチンカーで取り、クラブハウスは誰でも気軽に立ち寄れるカフェとして開放。コース内の管理棟はなんとコワークスペースに!

 ゴルフコースを活用したイベントも積極的に企画している。例えば、愛犬を連れてのラウンドやママゴルファー対象など、違うアプローチでゴルフを楽しむイベントを開催した。ナイトピクニックやヨガ、小学生の卒業式会場としての活用など、ゴルファー以外にも開放し、地域に親しむゴルフ場を目指している。また「初心者ゴルファーのサポート企画」も定期的に実施。クラブを無料で貸し出し、ボールやティーなどが贈られるだけでなく、知識豊富なサポートスタッフが18ホール中9ホール帯同し、ルールやマナーをレクチャーしてくれる。さらに「初めての競技ゴルフセミナー」では、座学と実地講習でルールを学べ、競技デビューへと導かれる。

アルペン史上最大規模のショップが新宿にオープン

 スポーツ専門店のアルペンは、東京・新宿東口に同社最大の旗艦店「アルペン トーキョー(ALPEN TOKYO)」を4月1日にオープンした。コロナ禍で健康意識がより高まり、運動人口が増え、ニーズが高まったことを反映し、地下2階、地上8階にスポーツデポ、アルペンアウトドアーズ、ゴルフ5の旗艦店が入る大型店の開業に踏み切った。ゴルフ5のフロアでは、ニーズやレベルに合わせた4種類8打席に女性優先試打席を設けるなど、ゴルフデビューをサポートする。スイング軌道などが映し出されるプロジェクションマッピング計測も画期的だ。ゲーム感覚で試せることで、より広い層に訴求できるだろう。

 今までとは違った感覚のゴルファーが増えつつあるゴルフ業界。ウエアやギアはさらに多様化し、機能も向上。三ツ星レストランのような名門コースから、ビブグルマンのビストロのようなスタイルのある気軽なコースまで、選択肢も広がっている。

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