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“成年年齢の引き下げ”は美容医療にも適用! Z世代が注意したいトラブルとは

 この4月から成年年齢が20歳から18歳に引き下げされたことで、18、19歳は親の同意を得なくても、自分の意志でさまざまな契約ができるようになる。ここでリスクになりそうなことが、高額の商品やサービスを契約した後に、キャンセルができなくなるということだ。

 未成年であれば親の同意を得ずに契約した場合には、民法で定められた「未成年者取消権」により、その契約を取り消すことができる。しかし、これからはその契約に対して責任を追わなければならなくなる。

 それは美容医療も同様。一般的なニキビ治療であれば、診療費が高額になることはまずないが、ヒアルロン酸注入などの注入美容や痩身マシンを使った治療、また、外科的な手術は費用が高額になりやすいため、18、19歳を子にもつ親はいっそうの注意が必要になる。

 というのも18、19歳を中心としたZ世代は自分の“リアルな見た目”よりも、“デジタルの中の自分”を本来の自分の見た目だと思い込む傾向があるからだ。

 彼らはSNSで自撮りをアップする際、アプリなどで“顔補正”や“肌補正”をする。以前から顔を加工するアプリは流行していたものの、Z世代に取材すると、最近は鼻と唇の間にある“人中”を加工するのは当然と話す。

 つまり、これまでのように“小顔にする”といった、ある種、現実感のない大雑把な加工ではなく、“プチ整形”のようなナチュラルな微調整ができるようになったことで、加工済みの画像=自分の本当の顔だと、より認識しやすくなってしまっているのである。

 このような背景から、プチ整形などの美容医療に対するZ世代のハードルは、団塊ジュニア世代が思うよりもずっと低くなっているのだ。ゆえに、美容クリニックの中には、18、19歳が勢いだけで治療に至らないように、すでに対策を講じているところもある。

治療のメリット・デメリットの理解が重要

 若年層向けの治療メニューが充実している「美容皮膚科シロノクリニック」では、「当院では4月以降も、18、19歳の患者に、家族による承諾書の提出をお願いすることになった」(シロノクリニック広報・藤垣貴子さん)と話す。

 「未成年者の患者の場合、保護者の承諾はもちろん、初回来院時には原則として保護者に同伴してもらっている。ただ、18、19歳の患者については20歳以上の家族の承諾で治療を提供するという対応をする」と、保護者の承諾は必要ないものの、近親者の確認をとるという対策を講じた。

 また、ニキビ治療で10代の患者も多く抱える「美容皮膚科タカミクリニック」は、「SNSをみて、『この治療を私もやりたい』と思っても、治療は人によって合う合わないがあります。しかし、医師によっては患者が希望する治療をそのまま施すケースも残念ながらゼロとはいえない」(タカミクリニック山屋雅美副院長)と警鐘を鳴らす。「また、あってはいけないことだが、医師が説明を怠っているケースもありえると感じている」。

 そのため、きちんとした治療を受けるためには、“治療内容を理解すること”が重要と話す。「まず、患者様にはしっかりと治療のメリット・デメリットを説明してくれる、信頼のおける医療機関を選んでいただきたい。加えて、その治療が本当に自分に合っているのか、また、希望する治療以外に代替治療としてどのような治療メニューがあり、費用は副作用がどうなのか、といったことまで質問する。そして、不安があったり、理解できない場合は治療をやめる判断も必要だ」。

 確かに良心的といえない美容クリニックは存在する。高額な治療コースの契約を強引にさせることでトラブルに発展するケースが出てくるかもしれない。

 「若いうちから美容皮膚科にかかることは、スキンケアやエイジングケアの正しい知識を育むうえで非常に有用なこと。ただ、今回の成年年齢の引き下げを受けて、必要以上の注入やプチ整形、強いピーリングなど、若いうちには必要のない治療を勧められてしまう可能性がある。若年層の患者にはクリニックのカウンセリングを慎重に受けてもらう必要がある」(シロノクリニック広報・藤垣貴子さん)。

 美容医療の広告が増えたことや、治療価格が安くなったこと、さらにSNSを用いたPR活動に取り組む美容クリニックが増えたことで、Z世代にとって、さらに身近な存在になっている美容医療。10年前とは異なり、今は美容皮膚科や整形外科の口コミを集めたサイトやアプリも増え、求めさえすれば必要な情報が手に入る時代にはなっている。

 とはいえ、美容医療のトラブルを避けるためにも、若年層に対しては事前の情報収集や治療内容の把握などを徹底するよう、周囲が積極的にアドバイスを与える必要があるだろう。

加藤智一/美容ジャーナリスト
PROFILE:美容業界歴は20年を超える。現在は、女性誌・男性誌・ウェブなどさまざまな媒体で編集・執筆を行うほか、講演やPRアドバイスも。著書に「お洒落以前の身だしなみの常識」「思わず触りたくなる肌になる 身だしなみメイク」(ともに講談社)など

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