REPORT
殺風景なガレージの中に一歩入ると、そこは真っ赤なカーペットを敷いた劇場が広がっていた。前回同様の会場で長いランウエイを用意し、来場者を一気にアレッサンドロ・ミケーレのドラマチックな世界観に引き込む。どこかギーク、けれどロマンチックなムードを兼ね備えたスタイルは、性差や時代のボーダーを取り払った折衷主義を継続。今季は映画監督のウェス・アンダーソンの世界観のような70’sの要素をさらに強め、トレンドのグランパスタイル(おじいちゃんの洋服を引っ張り出して着たようなレトロなスタイル)も示唆している。
ミケーレの手にかかれば、世代の壁もなんのそのだ。イメージは、おじいちゃんのおさがりのセットアップに、自身の幼少期の愛用品を合わせたようなユルいミックス感。スヌーピーのランニングウエア、テディベアがちりばめられたニットカーディガン、ダメージデニムなどからは、愛着を感じる着古した風合いが漂う。インテリアファブリックのようなレトロな色柄のウエアは、クローゼットに長く眠っていたものを慌てて引っ張り出したのか、随所に折りジワがあり微笑ましい。背中には、動物モチーフを愛するミケーレらしい、クジャクやヘビたちのエンブロイダリーでひとさじの毒気を加えた。ファッショニスタを魅了したファー付きのホースビットローファーは、チェック柄をはじめバリエーションが広がっている。
細部にわたる70'sの世界観に圧倒されるが、アイテムを単品で見てみると「グッチ」らしいクラシックが基盤にあることがわかる。先シーズンに比べフォーマルなセットアップが充実。こっくりとしたビンテージライクなカラーパレットがあふれる中で、時折シンプルなTシャツとスラックスといったワードローブが登場し、夢からさめたように現代に引き戻された。時代・世代間を行き来しながら、テーラードやストリート、クラシック、オタク的カルチャーといったスタイルも自由に横断する、ミケーレ流の現代のマスキュリンが再定義された。
LOOK
BACKSTAGE