アダストリアは2026年2月期を最終年度とする中期経営計画を発表した。「グッドコミュニティーの共創」を掲げ、26年2月期の連結売上高2800億円(22年2月期は2015億円)、EC売上高800億円(同574億円)、営業利益率8%を目指す。引き続き、①国内市場でのマルチブランド戦略、②デジタルでの顧客接点拡大、③海外事業、④食を中心とした新規事業の4軸を成長戦略とする。
具体的に、①では既存ブランドをステージや求められる役割に合わせてグループ分けし、ポートフォリオ全体で成長を目指す。将来的に500億円規模を目指す現状200億〜300億円前後の大規模ブランド群(「グローバルワーク」「ニコアンド」など)と、新セグメントや新カテゴリー開拓を狙う成長型ブランド群(「ウタオ」「カオス」「エーランド」など)、ブランド力を上げて収益性を高める高収益ブランド群(「ジーナシス」「ハレ」など)の3つに分類し、人口減で縮小する国内市場を深耕する。OMO型ストアの「ドットエスティストア」で積極出店を進めるほか、次なる芽として22個育成中というブランド内ブランドの中からも、独立ブランド化や出店を考える。
②のデジタル戦略では、中計の4年間のうち前半2年で客数アップ、後半2年で購買回数アップを目指す。現在、自社EC会員数は1360万人。引き続きテレビCMで新規客の取り込みを図るほか、自社ECを他社にも開放してオープン化することでカテゴリーを広げ、顧客接点拡大を目指す。既に1月から、サンマルクホールディングスの「サンマルクカフェ」「鎌倉パスタ」の食品がアダストリアの自社ECで買えるようになっている。他社がアダストリアECに出店するという形を取り、アダストリアは在庫を持たない。物流の仕組みなどは、取り組む相手先とそれぞれ検討する。海外ECも成長が見込める分野として期待。中国本土はTモールを軸にし、台湾、香港、東南アジアでは自社ECを構築していく。
③では、中国市場が投資フェーズにある中でも、22年2月期に海外事業全体として黒字転換したことに手応えを得ている。中国市場は、上海で「ニコアンド」を現在5店運営している。ドミナント戦略を進めることで、ブランディングと収益の両面で成果を出しているという。中国事業は中期的に売上高200億円を目指して投資を続け、23年2月期中には成都にも出店予定。また、フィリピンやタイでも「ニコアンド」の出店準備を進める。米国は、現地ブランドのM&Aで事業拡大を目指す。26年2月期の海外事業売上高目標は最低でも400億円という。
④の新規事業では、2月にハワイアンカフェ「アロハテーブル(ALOHA TABLE)」などを運営するゼットンを連結子会社化し、社内で育成が遅れていた飲食事業の強化を進めている。ゼットンは23年2月期に黒字化させ、26年2月期に売上高100億円、営業利益4億5000万円というコロナ禍前の水準まで回復させる。飲食事業以外でも、長期的な成長のために積極的なM&Aを行なっていく。その一環として、子ども服のEC専業ブランドを手掛けるオープンアンドナチュラルを子会社BUZZWITで子会社化し、22年5月から連結に加える。
新中計や13日に発表した22年2月期決算が好感され、株価は大幅上昇、14日は一時東証プライム市場の値上がり率ランキング1位となった。