三陽商会は、2025年2月期を最終年度とする新中期経営計画を発表した。同期末に売上高625億円(22年2月期は496億円※ )、営業利益43億円(同10億円の赤字)を目標値に定める。計画は大江伸治社長が就任(20年5月)以後進めてきた人員や店舗整理などの構造改革、仕入れの絞り込みによる収益力改善が前提となる。基幹ブランドに経営資源を集中し、アッパーミドル市場(世帯年収800万〜1500万円)でのシェア拡大を成長のドライブにする。
※三陽商会は2023年2月期から会計基準を変更。百貨店取引における販売手数料を販管費として計上する。記載の数値は新基準を適用し調整したもの。適用前の売上高は386億円
重点強化するのは「マッキントッシュ フィロソフィー(MACKINTOSH PHILOSOPHY)」「ブルーレーベル/ブラックレーベル クレストブリッジ(BLUE LABEL/BLACK LABEL CRESTBRIDGE)」「エポカ(EPOCA)」といった基幹の百貨店ブランド。それぞれの個性や世界観の発信拠点となる直営店の出店を進め、25年2月期の直営店売上高は22年2月期から2.8倍に増やす。
これらのブランドからは、価格を抑えた若者向けのセカンドブランドを派生させ、同社のポートフォリオにおいて手薄なファッションビルやSC販路の開拓を進める。すでに21年春夏にはユニセックス商品をそろえる「マッキントッシュ フィロソフィー グレーラベル(MACKINTOSH PHILOSOPHY GREY LABEL)」をスタートし、新宿ルミネ1に店舗を構えた。今秋冬には「シービー クレストブリッジ(CB CRESTBRIDGE)」を立ち上げ、期中に5店舗を出店する。
百貨店チャネルの売上高は22年2月期との比較で17%増を見込む。ただし、「出店は高効率な立地に絞る」(大江社長)。OMO(オンラインとオフラインの融合)推進による既存店舗の収益力向上に軸足を置く。「シービー クレストブリッジ」の1号店となるららぽーと横浜店には、NRIデジタルとプレイド(東京都、倉橋健太CEO)と合同で店頭設置カメラなどによる来店客の行動分析をトライアルし、他ブランドへの展開も視野に入れる。
新型コロナの影響長期化により、同社の2022年2月期の業績予想は期初から2度の下方修正を余儀なくされた結果、営業損益は10億円の赤字。バーバリーショック以来6期連続の営業赤字に終わった。消費の二極化傾向が進む中で、特に同社が強みとするボリュームゾーンの婦人服フロアは一層厳しい状況が予想される。だが大江社長の戦略方針は揺るがない。「当社の販売状況をみると、高価格帯のテーラードスーツの売れ行きが上向いており、クオリティーやグレードの高さを求める消費者のニーズは高まっている。ミドルアッパー市場の今後には全く悲観していない」。