ファッション

「D2Cとは呼ばれたくない」 売上高38億円に育った「アメリ」に聞く、ファンに刺さるモノ作り【前編】

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 ビーストーン(黒石奈央子CEO)のウィメンズブランド「アメリ(AMERI)」は、2014年の立ち上げ以来順調に成長を続け、21年7月期の売上高は38億円となった。今では国内外に6店を構えているが、ECに強く、“D2C(ECを主販路にする顧客直販型)ブランドの代表格”と見られることも多い。実際、「アメリ」が強みとしているSNSやユーチューブでの発信力の高さやSNSの反応をもとにした需要予測などは、非常にD2C的だ。ただし、取材をしているとそういったD2C的なテクニックは、「アメリ」にとって実は副次的なものだと気づく。ファンをつかんで離さないのは、同質化する市場の中でほかにないデザインを追求しているから、という部分の方が大きい。ウィメンズのリアルクローズ市場で圧倒的な人気を誇る「アメリ」のデザインのプロセスを取材した。

 「周りからD2Cブランドだとカテゴライズされることは非常に多いが、私はそうは呼ばれたくない」と黒石CEO。ここ数年でモノ作りのプラットフォームが個人にも開放され、ファッションビジネスの経験やノウハウのないインフルエンサーがD2Cブランドを立ち上げる事例が増えている。SNSで抜群の知名度を誇る彼らは、立ち上げ早々から大ヒットを生むケースも少なくない。しかし、実際は韓国の卸売市場から売れそうなものを買ってきているだけだったり、OEMメーカーが提案するデザインの中から気に入るものをピックアップしているだけだったりということも多い。それゆえ商品が同質化し、“パクリ”で炎上することもある。「うちはそういう作り方は全くしていない。(D2Cブランドという呼び名でくくられることで)軽く作っているんだと思われたくない」と黒石CEOは続ける。

 では具体的に、「アメリ」ではどのように商品企画を進めているのか。象徴的な商品が、2022年春夏のチュールメッシュのタイダイ柄ドレスやトップスだ。タイダイ柄は今季のトレンドでもあり、他社でも企画はしている。ただし、「アメリ」のタイダイは、アトリエ内で氷染めと呼ばれる技法のワークショップを行い、それをデータ化した唯一のもの。ワークショップは松崎仁美デザイナーが主導した。松崎デザイナーはペイントやアルコールインクアートなど、毎シーズン何かしらのワークショップを他のスタッフを巻き込んで行い、オリジナリティーを追求している。20年12月に発売したアルコールインクアートのワークショップから生まれたプリント柄のドレスは、2700枚を売るヒット商品になった。

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