中国のブライダル業界では、民族衣装をモダンに再解釈したデザインのウエディングドレスが次世代の富裕層を中心に盛り上がりを見せている。伝統的に着用されてきた白いウエディングドレスから脱却し、カラフルで金のドラゴンやフェニックスの柄が入ったものなどが人気だという。注目の中国ブライダルコレクションを紹介する。
中国本土のみならず、香港やシンガポールにもクライアントを抱える「フーシャン ザン(HUISHAN ZHANG)」。デザイナーのザンは、新型コロナウイルスのパンデミックから2年余りが経った今、結婚式を挙げるカップルが急増し、ウエディングドレスを手掛けてほしいと望む声が多くなったという。「ブライダルコレクションを開始してから、既存の顧客だけでなく、新しい客層にもリーチできるようになった。需要は確実にあったので、思い切ってブライダルのみのコレクションを発表した。羽やスパンコールがついたウエディングドレスを着たお客様を見るのはとても楽しい。中国では自身のスタイルに合わせたドレスが選べるからか、ブライダルに特化したブランドより、既製服も手掛けるブランドのドレスが特に人気だ。中国の結婚式ではお色直しを何度もするので、特に色やスタイルに工夫があるデザインが好まれている」と語る。
シアー素材やビーズを使った幻想的でエアリーなデザインが特徴の「スーザン ファング(SUSAN FANG)」は、セルフリッジ(SELFRIDGES)やドーバー ストリート マーケット(DOVER STREET MARKET)、ブラウンズ(BROWNS)といった欧米のセレクトストアにも出店する。デザイナーのファングは、「自分の好みや求めるものを把握している人が多く、オーソドックスなトレンドを真似するのではなく、どこかユニークで作り手の愛が詰まった一着を探している。当ブランドのドレスは自然に着想を得ており、楽しさとともに優美さや幽玄的な雰囲気を表現している。特別な機会や、ウエディングにもマッチするドレスだ」と語った。中でも人気なのは、レイヤーと刺繍を加えたオーガンザ素材のドレス。カラフルな羽を刺繍し、水彩画のようなデザインに仕上げたものだ。
キャロライン・フウ(Caroline Hu)は、スモッキング刺繍を巧みに使って水彩画のタッチを再現し、フェアリーな雰囲気をまとったドレスを手掛ける。22年現在、オーダーの半分はウエディング関連だという。オーダーのほとんどは白いドレスを「キャロライン・フウ」風にアレンジしたものが占めるが、中にはより大胆なカラーを注文する顧客も増えている。
22年の「LVMHヤング ファッション デザイナー プライズ(LVMH YOUNG FASHION DESIGNER PRIZE以下、LVMHプライズ)」のセミファイナリストに選ばれているユキィ・キィ(Yueqi Qi)。友人でインフルエンサーのクリスティン・サン(Christine Sun)のために、刺繍デザインを施した黒いウエディングドレスを手掛けたことをきっかけにブライダル関連の需要の高さを実感しているという。「サンは暗い色で、中国文化の要素があり、夫と自分の名前があしらわれたドレスを希望した。王道のウエディングブランドも試してみたものの、ほとんどが伝統的な西洋スタイルの白いドレスで気に入らなかったようだ。もっと特別な一着を探して、私に声をかけてくれた」と語る。