東京マラソンと名古屋ウィメンズ・シティマラソンがそれぞれ2年ぶりに開催された。東京マラソンは1万9188人が、名古屋ウィメンズ・シティマラソンには8698人が参加し、エリートランナーから市民ランナーまでがレースを楽しんだ。「WWDJAPAN」編集部からは、スポーツ担当の記者2人がレースに参加。ここでは、運営の変化や当日の感想、マラソン大会の意義などをざっくばらんに語り合う。
【対談メンバー】
大塚:「WWDJAPAN」副編集長。39歳男性。フルマラソンは3回目で、過去最高の練習量とコンディションで挑む。記録は4時間24分。ランニングは月間100km以上で、かっこいいギアがあればつい走ってしまう。
美濃島匡:入社5年目の「WWDJAPAN」編集部記者。26歳男性。気分転換のため月に2回ほどランニングするビギナーで、今回が大会初参加。ビビりまくって名古屋シティマラソン10kmの部にエントリー。記録は53分23秒。
美濃島:ここ数年、スポーツイベントの多くが中止・延期となっていましたが、ワクチンの接種などで活動制限が緩和され、東京マラソンと名古屋ウィメンズ・シティマラソンが無事に開催されました。
大塚:ようやくここまで来たね。まだまだ安心はできないけど、徹底した感染対策のもと大きなスポーツ大会が実施できるのはうれしいです。
美濃島:大塚さんは数年ぶりのマラソンですが、運営面で大きな変化はありましたか?
大塚:まずは最近のファッションショーと同じく、オペレーション面のデジタル化が一気に進んだこと。東京では、ランナーはアプリをダウンロードして、体調と体温、コロナの症状がないかのチェックを2週間前からやる必要があった。それを見せないとレースはもちろん、東京ビッグサイトで行われた「東京マラソンEXPO」にも入れなかったんだよ。
美濃島:名古屋も同じようなオペレーションでした。2週間前からウェブページでの体調管理が必須で、当日は3日以内に行ったPCR検査の結果証明が必要でした。慣れないことばかりでなかなか面倒でしたが、これくらい徹底しないと開催にはこぎつけなかったでしょうね。
大塚:そうだね。当日入場できなくてトラブっている人も数人見かけたけど、基本的には大きな問題もなく運営されていた。
美濃島:EXPOはにぎわってましたか?
大塚:混雑しないようアポイント制だったけど、けっこうにぎわっていたよ。これならメーカーも出展する価値があるなと納得した。
美濃島:東京は2万人弱のランナーが参加するから、訴求力はかなり大きいですよね。知らないメーカーを知るきっかけにもなるし、ランナーにとってもうれしいイベントです。名古屋のイベントも多くの人が入っていました。
レースの醍醐味は
ギャラリーとのコミュニケーション
大塚:美濃島さんは初めてのレースどうだった?
美濃島:まず人の多さにびっくりしました。参加費だって決して安くはないのに、こんなに集まるんだって。
大塚:思ったより多かったよね。でも、その分熱気があって、“祭り”感がすごかった。
美濃島:そうなんです。僕は長距離が苦手なんですが、いざ会場に着くとワクワクしてきて(笑)。東京マラソンはどうでした?
大塚:めちゃくちゃ楽しかった。今までのレース直後はキツすぎて(もう二度と走りたくない)と思っていたのに、ゴールしてからすぐに(また走りたい)と思えたのは東京が初めて。
美濃島:これまで、ちばアクアラインマラソン(千葉)と湘南国際マラソン、和歌山のハーフマラソンを走ったことがあるんですよね。やはり全然違いますか?
大塚:東京はギャラリーとのコミュニケーションが最高なんだよね。どの大会もスタート地点や街のパートには人がいるけど、自然豊かなポイントになるとギャラリーがいなくなるから、自分との戦いになる。でも東京はずっと街中だから、人が全然途切れない。手を振られて、手を振り返す、みたいなコミュニケーションが楽しくて。
美濃島:なるほど。名古屋でも「頑張れ」と書かれたうちわで応援されたり、子どもが手を振ってくれたり。天候にも恵まれて、ギャラリーもすごくハッピーなムードで、楽しみながら走れました。
大塚:途中、野球で使う細長いバルーンをバンバン叩きながら応援してくれるおばちゃんがいたから手を振ってみたら、「かっこいい!」って言われて(笑)。普段言われないからまんまとテンション上がって、ちょっとブーストかけて脚がつりました。
美濃島:乗せられブーストですね(笑)。ただ、トップランナーだけでなく、僕たちみたいな市民ランナーも応援してくれるのはなぜなのでしょうか。
大塚:ギャラリーもランナーとのコミュニケーションを楽しみたいんだと思う。コール&レスポンスって気持ちいいからね。僕も序盤は恥ずかしいからノーリアクションだったのだけど、途中からガンガンリアクションするように切り替えたら本当に楽しかった。
美濃島:あー、なるほど!腑に落ちました。ギャラリーに加えて、大通りを独占して走るのも最高でした。街中という日常的なロケーションが、レースという非日常の空間に変わるというか。
大塚:それも醍醐味だよね。東京は新宿でスタートして、飯田橋から浅草の方に行って、そこからぐるっと回って東京駅に行く感じのコース。銀座のど真ん中を疾走するのは本当に気持ち良かった。ちなみに美濃島さんはマスクを付けて走ってた?僕はずっと付けてたんだけど、途中からみんな外しててびっくりしちゃった。
美濃島:僕は途中で外しました。マスクを付けたままだと呼吸しづらいし、1km超えたくらいでランナーがバラついてきたからいいかなと。あ、東京マラソンの公式ページには「スタートライン付近までマスクを着用し、スタートした後も携帯して走ってください」と書かれてますよ。
大塚:え、外して良かったんだ。いつもマスクで走ってるから慣れちゃって、外すという発想がなかったな。
美濃島:当日アナウンスしてくれると丁寧ですよね。とはいえ、外してランニングするのは少し気が引けたので、感染リスクを考えず、気持ちよく走れる日が待ち遠しいです。
スポーツメーカーの“足もと”バトル
やっぱり「ナイキ」が大人気
大塚:仕事柄、レース中も足もとに目が行きがち。肌感だけど、シューズは「ナイキ(NIKE)」が多くて、全体の3割くらいを占めていた印象です。その次に「アディダス(ADIDAS)」「アシックス(ASICS)」って感じ。
美濃島:名古屋も同じくらいでした。「ナイキ」はダントツで、機能はもちろん、はいていて気分が上がるデザインも大事だなと思いました。スポンサーだからか、「ニューバランス」の着用者も目立ちました。
大塚:美濃島さんは何をはいたの?
美濃島:僕は「ニューバランス」の“フューエルセル レベル ブイツー(FUELCELL REBEL V2)”。去年登場したモデルで、反発性とフィット感が好みのシューズです。実はレース用に別のモデルを用意してもらっていましたが、こっちで走っちゃいました(笑)。
大塚:おいおい(笑)。でも初めてのレースだし、好みのシューズで挑みたいのは分かります。僕は「アシックス」の“ゲルカヤノ(GEL-KAYANO)”。エリートモデル“メタスピード(METASPEEDE)”とかじゃなくて、スタンダードなモデルでした。
美濃島:「ニューバランス」は、“マラソンマンデー”という施策も行っていました。日曜にマラソンを楽しみ、翌日の月曜も名古屋を満喫しようというもの。名古屋市内の協力店舗で、完走後に配られるカードと「ニューバランス」のEC会員ページを見せると、いろいろな特典を得られます。味噌カツやうなぎ、あんかけパスタなどの名古屋名物を割安で楽しめたり、「ニューバランス」の店舗でTシャツにレースタイムをプリントできたり。僕は翌日から東京で仕事だったので参加できませんでした(涙)。
大塚:へー、すごいね!マラソンって地方に遠征しにいくことも多いし、レースだけじゃなく観光や名産も楽しんでもらうのは地元にとってもいいアピールになるよね。東京は遠征する感じではなかったけど、逆にいえばアクセスの良さが何よりの魅力。ゴール地点の最寄駅は二重橋前駅で、地下鉄に降りるとき手すりに寄りかかる人が続出してたのが面白かった。
美濃島:ゾンビ映画みたいですね(笑)。旅費がかからないのは東京のメリット。だからこそ2万人も参加するんでしょうね。
マラソンを終えて
美濃島:初のレースにビビり散らかして10kmにしちゃったので、次はハーフマラソンに挑戦したいです。大塚さんの話を聞いて東京がかなり面白そうだから、来年エントリーしてみようかな。
大塚:東京はフルの方が楽しいと思うよ。コースも面白いし、参加者の熱気も段違いだから。僕ももう一回東京を走りたいな。あと、地方のレースにもひさしぶりに参加したい。なんだかんだいっても、自然の中を走るのって気持ち良いからね。
美濃島:湘南国際のスポンサーに「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」が、北海道に「オン(ON)」が就任するなど、スポンサーの入れ替えもあって、レースの色も変わりそう。この辺りのレースにも機会があれば参加したいですね。