素肌がうっすら透けるシアー素材のアイテムに、意外な新顔が登場しています。これまでは裾や袖を透かして見せる演出が主流でしたが、新発想のタイプはアウターや手袋にまで広がり、スタイリングに新鮮さを与えてくれます。さらに、涼やかさや気品、はかなげなムード、立体感なども備わるので、着こなしが一段と華やぎます。
「チカ キサダ(CHIKA KISADA)」は、チュール素材を使ったボリュームたっぷりのドレスを披露。パンツルックの上から重ねてボディーラインをぼかす、“おぼろげなコーディネート”を提案しています。今回は、初夏の装いにニュアンスを上乗せする、シアー素材のニューフェイスにフォーカスしたスタイリングをご紹介します。
アウターでセンシュアルなムードを帯びる
これまでのシアーアイテムはブラウスやスカートが主役でしたが、この春夏はアウターにまで透ける素材が進出。羽織り物特有の重いイメージをそぎ落とす効果を発揮しています。ジャケットは透けないはずという先入観があるだけに、サプライズな装いに仕上がります。
「アキコアオキ(AKIKOAOKI)」は、トレンチコート風のアウターをシアー素材で仕立てました。ワンピースや両腕がほのかに透けるので、エアリーな見え具合に。もはやコートの印象は薄く、ブラウスのような存在感でかさばって見せません。ワンピースの上に重ねて、表情を深くするのが賢い夏のレイヤードです。
2枚目の写真「フェティコ(FETICO)」は、大胆にシアー効果を取り入れました。ウエストを程よく絞った端正なテーラードジャケットなのに、両袖も裾もシースルー。透けていないのは身頃の上半分だけという異素材ミックスです。フェティッシュとマニッシュが交じり合う新しいムードを醸し出しています。マイクロミニ丈のボトムスと合わせて、ジャケットをワンピースに見せるようなセンシュアルなコーディネートです。
チェック柄でアンニュイさや爽やかさを演出
従来のシアーな服に無地が多かった理由は、ほんのりした透け加減を生かすには無地が向いていたという事情があったようですが、最近は柄との組み合わせが試されています。さまざまな柄の中でも、チェック柄とのミックスは意外性が高いマリアージュです。
「ペイズム(PEISM)」は、チュール系の透ける生地でチェック柄のプリーツスカートを仕立てました。シアーな景色にチェック柄が淡く写り込み、アンニュイな見え加減に。不ぞろいの裾で動きも出ています。はかなげなスカートにあえてストリート風のビッグTシャツを合わせてずれ感を演出。足元はゴツめのショートブーツでスカートのたおやかさを際立たせています。
チェック柄はシャツのモチーフとしてもおなじみです。透ける素材とのコンビネーションは、見慣れたチェック柄のシャツを、夏の軽やかなアイテムに変身させてくれます。
2枚目の写真「ミオズモーキー(MIOSMOKEY)」は、メンズのシャツコートとウィメンズのシャツをシアー素材で提案しました。涼やかなグリーンとブルーが爽やかさを添えています。シンプルなパンツと合わせても、どこかはかなげな雰囲気を帯びているのは、袖や裾が透けているおかげです。
ロマンチックなアームアイテムで“貴婦人風”に
真冬の防寒具として知られるアームウォーマーや手袋が、夏のアイテムにも仲間入り。シアー素材だと装いにクールな印象が漂います。腕や手を温めるアイテムが逆の効果をもたらすという、ウィットフルな新顔の小物です。
チュール系の素材を使ったアームウォーマー風ピースを打ち出したのは、「ヨウヘイ オオノ(YOHEI OHNO)」。シャツの袖部分を切り離したかのようなデザインが特徴。キラキラのビジューが施されていて、サマールックにノーブルな雰囲気を添えてくれそう。シアー素材のおかげで腕との隙間がはっきり見えるので、スリムに写ります。
薄着になる夏服はさっぱり見えがちですが、レディーなムードを帯びた小物を生かせば手軽に格上げが叶います。22-23年秋冬にトレンド入りが見込まれるロンググローブも、シアー仕立てなら夏のうちから出番アリです。
2枚目の写真「ティート トウキョウ(TIIT TOKYO)」が用意したのは、ひじ上まで覆うロンググローブ。クラシックな貴婦人風の気品が漂います。ネット状の素材なので、シャツに合わせると質感の違いが際立つ異素材レイヤードに仕上がります。
シアー素材の新たな活用法には、デザイナーたちのチャレンジ精神がうかがえます。手持ちのウエアと組み合わせるだけで、涼やかで繊細な雰囲気をまとえるのはシアー素材ならではのメリット。毎年、ゴールデンウイークあたりからは“もはや夏”を感じる現在、新顔のシアーアイテムを早めの夏支度に役立ててみてもよさそうです。