言わずと知れた「ステラ マッカートニー(STELLA McCARTNEY)」や「エルメス(HERMES)」の新素材導入から、「プラダ(PRADA)」の再生ナイロン“プラダ リナイロン”まで、ハイブランドのサステナビリティは進化する一方だ。とはいえ、皆がハイブランドを毎日のように着たり購入したりは難しく、なじみの薄い人にとってブランドの循環型社会に対する取り組みにまで意識を向けることは、なかなか難しいのかもしれない。
ただ今は、主たるハイブランドのほぼ全てがサステナブルへの取り組みを掲げ、それは当たり前のように広がっている。もともと「ハイブランド」と「サステナブル」は、とてもいい関係。ステラ・マッカートニーは、「一番サステナブルなのは、みんなが着たいものを作ること」と語る。高い技術と伝統を守り抜き、引き継ぎ、「大切に着たい」という感情を抱かせ、万が一壊れてしまった時の修理やお直しも徹底しているブランドこそ、「ハイブランド」として君臨できたのでは?とも思う。
とはいえハイブランドも行き過ぎた商業主義の影響で、環境を軽視してしまった過去は否めない。ではなぜ、ハイブランドのサステナブルへの取り組みは、また当たり前になったのだろう?
理由はたくさんあるが、ファッションの都パリやヨーロッパ全体で進む循環型社会への変革は、ブランドをサステナブルに突き動かすきっかけとなった。さらには「遠い将来」と感じていた環境破壊が、すぐそこまで来ていることが感じられるようにもなった。
そしてもう一つは、ミレニアル世代の登場だ。ハイブランドにとっては未だ経営の基盤にはなっていないかもしれないが、実は今、多くのブランドが確実に取り込みたい世代として一番大切にしている。現在の顧客には50代以上も多く、こうした顧客に永遠に依存するのは不老不死の薬でも開発されない限り不可能だ。だからこそ、ミレニアル世代なのだ。そして彼らのほとんどが、このままでは直面するであろう環境破壊を体感し、不安な未来に対して恐怖心を抱いている。だからこそミレニアル世代は、サステナブルや地球環境への関心が最も高いとされている。後世に残すため、ブランドにとってミレニアル世代の獲得はマスト。そんな理由もあってか、ハイブランドのサステナブル戦略は止まるところを知らない。
私が好きな「グッチ(GUCCI)」や「クレージュ(COURREGES)」の、脱プラスチックの動きには感動した。コレクションでは天然素材の麻の需要が高まり、ファーで有名な「フェンディ(FENDI)」は技術をふんだんに使って素晴らしいリメイクファーを打ち出している。「エルメス」のキノコレザーは、どこまで行くのか気になりすぎて、いつか手に入れたい。今までの「着飾りたい」だけの欲望が、循環型社会への関心やパーマネントな生き方への共感となって、これまで以上にハイブランドが愛され、その美しき伝統が永遠に引き継がれる未来はそう遠くない。