ロサンゼルスを拠点とするアクセサリーブランド「タリナ タランティーノ(TARINA TARANTINO)」を運営するタリナ・タランティーノ・マネジメント(TARINA TARANTINO MANAGEMENT)が、日本の民事再生法に当たる米連邦破産法第11条の適用を破産裁判所に申請したことが一部で注目を集めている。同社が保有する建物の壁に、覆面アーティストのバンクシー(Banksy)による作品が描かれているためだ。
“ザ・スパークル・ファクトリー(The Sparkle Factory)”と呼ばれるこの建物は、1914年に建てられた。ロサンゼルスのアパレル卸問屋街であるファッション・ディストリクトにあり、広さはおよそ2400平方メートル。23年に公開されたサイレント映画の名作「ロイドの要心無用(原題:Safety Last!)」の撮影が行われたことでも知られている。また、ハリウッド映画の衣装を専門に取り扱うウェスタン・コスチューム・カンパニー(WESTERN COSTUME COMPANY)が長年にわたって入居していた。2007年に、「タリナ タランティーノ」の創業デザイナーであるタリナ・タランティーノと夫のアルフォンソ・カンポス(Alfonso Campos)ほか数人が同建物を400万ドル(約5億円)で購入。その後、10年にバンクシーが“ガール・オン・ア・スイング(Girl on a Swing)”として知られる作品を壁に描いた。なお、これはバンクシーが自身の作品だと認めているものの一つ。14年には、メルローズ・アベニューにあった「タリナ タランティーノ」の店舗が同建物に移転。現在は、ほかに複数のテナントが入っている。
ファッション・ディストリクトは、14年に米シアトル発のライフスタイル型ホテル「エースホテル(ACE HOTEL)」がオープンした頃から人気が高まり、「アクネ ストゥディオズ(ACNE STUDIOS)」「イソップ(AESOP)」「アー・ペー・セー(A.P.C.)」「ガニー(GANNI)」「ポール・スミス(PAUL SMITH)」などのブランドが相次いで出店した。
「タリナ タランティーノ」は1995年創業。色鮮やかなビーズや「スワロフスキー(SWAROVSKI)」のクリスタルを使用したアクセサリーを手掛けており、ハローキティや米マテル(MATTEL)のバービー人形などともコラボレーションしている。タリナ・タランティーノ・マネジメントは、タランティーノとカンポスが株式を41.5%ずつ保有しており、800万ドル(約10億円)の抵当貸付などの返済を迫られている。同社が破産裁判所に提出した書類によれば、建物自体の価値は1600万ドル(約20億円)、バンクシーの壁画は別途1000万ドル(約12億円)程度と見積もられているようだ。カンポスは、「コロナ禍の影響により苦難に直面しているが、破産裁判所の支援の下、事業再建を目指したい。“ザ・スパークル・ファクトリー”には多大な労力と資金を注ぎ込んでおり、これからも価値のある素晴らしい建物として維持してロサンゼルス市に貢献したいと考えている」とコメントした。