渋谷パルコは4月27日、新たな自主編集スペースとしてアートフィギュアギャラリー「ワンスラッシュ(1/ONE SLASH)」を5階にオープンした。フィギュア界の重鎮であるデザインココとタッグを組み、約9坪のスペースで等身大フィギュアを展示・販売する。第一弾として7月18日まで、コーエーテクモゲームの「ソフィーのアトリエ2」の主人公ソフィーの等身大フィギュアを展示・販売する。高さと幅が2mの等身大フィギュアで台座付きの特別バージョン(1個限定)が605万円、通常バージョンが429万円、1/7スケールの高さ26cmのフィギュアが2万3980円で、フィギュアは全商品がパルコのオンラインストア「カエルパルコ」経由での完全受注生産&販売になる。
デザインココと同社を率いる千賀淳哉・代表取締役は、フィギュア界ではよく知られた存在だ。同社はフィギュアを、デザインから3Dデータ作成、製造、彩色までの一貫生産しており、これまで六本木ヒルズの森アーツセンターギャラリーで開催された「尾田栄一郎監修 ONE PIECE展」や「エヴァンゲリオン」「初音ミク」の等身大フィギュアなど、数多くのプロジェクトも手がけてきた。千賀代表に聞いた。
WWDJAPAN(以下、WWD):なぜ渋谷パルコに?
千賀淳哉デザインココ社長(以下、千賀):これまでも数多くの企業から出店要請や共同プロジェクトを持ちかけられてきたが、ほとんど断ってきた。ただ、フィギュアを売ることだけが目的のプロジェクトなら、パルコでも断っていただろう。最大の目的は、フィギュア、それ自体の付加価値をもっと高めたかったからだ。漫画やアニメ、ゲームは大ヒットした作品ばかりに目が行きがちだが、実際にはヒットするのは本当に少ない。それでも作者から出版社、ゲーム会社などと一体になって全員で夢を追い求めてきて、今がある。加えて、フィギュアにする場合は、それぞれのキャラクターや原作の世界観を生かしながら、2次元のものを3次元にするわけだから当然難易度も高い。評価を受けているのは、常に全力で取り組んできた結果だが、このフィギュア自体の価値を高めるためには、単独では難しい。フィギュアの歴史に新たな価値を付け加えたいと考えたときに、パルコからオファーがあった。
WWD:特別バージョンは605万円、通常バージョンでも429万円とかなり高いですね。
千賀:フィギュアに馴染みのない人には高いと思うかもしれないが、それは違う。これまでもアート作品なども数多く手がけてきたが、この「ソフィー」に関しては、手間や細部のこだわり、クオリティーの高さを考えれば10倍の価格で販売してもいいくらいだ。ただ、価格や売り上げよりもこれまでECのみで売ることが多かったフィギュアを、リアルな場所で、国内外のいろいろな人が行き交う「渋谷パルコ」という場所で見せられることに意義を感じている。
WWD:今後は?
千賀:当社の工場は宮城県登米市にあって、最先端の機械も使うし、丹念な手作業も行っているが、そうした社員のほとんどは、最近は美大出身者も増えてきたが、地元雇用の女性だ。我々が漫画やアニメが原作のキャラクターをフィギュア化するときは、誇張でもなんでもなく、原画1枚から最終的にフィギュアにまで仕上げることだって少なくない。実際に当の漫画の作家本人からフィギュアを見て「ようやく本当に漫画の中から出てきてもらえた!」と言われることだって少なくない。それくらい心血を注いでフィギュア作りに取り組んできた。フィギュアはまだ現時点ではポップカルチャーの一種と取られられているが、最終的なゴールは現代アートを目指している。そのためにはこれからはパルコと組み、ファッションやアート、カルチャーとった分野の企業やクリエイター、アーティストとのコラボレーションを積極的に進めたい。