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高島屋「売らない店」は海外市場の入り口 新宿に29日オープン

 高島屋は29日、新宿店にショールーミングストア「ミーツストア(MEETZ STORE)」をオープンした。「食・グルメ」「ジェンダーレスなライフスタイル」「ビューティー」「アート&クラフト」「エシカル」のテーマに沿って、D2Cブランドを中心に約60社の幅広い商品を並べる。店頭には在庫は置かず、消費者はウェブサイトを通じて購入する“売らない店舗”。百貨店として新しいビジネスモデルへの挑戦となる。

 新宿店で客の出入りが最も多い2階メインエントランス横の一等地に80平方メートルの店舗を設けた。商品を引き立てる白をベースにした清潔感のある空間。棚に出品企業の商品を並べて、棚単位で固定の出店料を取る。出店料は非公開だが、「既存のショールーングストアとほぼ同じ水準」(同社)だという。

 ユニークなD2Cブランドを集めるとともに、「食・グルメ」でタレントの寺門ジモン氏、「ビューティー」でモデルの浦浜アリサ氏ら5人のキュレーターを起用して、それぞれの目利きで選んだ商品を並べる。百貨店らしくギフトを強化しており、特に若い世代に広がるSNSを通じた「ソーシャルギフト」(サービス開始は5月16日)に対応する。来店できない人のためにオンライン接客も実施する。

 売上高などの目標は公表していない。高島屋のグループ企業でプロジェクトを主導するタカシマヤ・トランスコスモス・インターナショナル・コマース(本社・シンガポール、TTIC)の川口貴明CEOは「店舗として利益を出すよりも、新しい小売りの姿を探ることを主目的にしている。見えないスキームが重要になる」と説明する。

 見えない枠組みとは、第一に出店者への定量・定性データの提供だ。売り場の天井にはAI(人工知能)カメラを配して、客がどの商品に手を伸ばし、どのように動いたかの情報を集めて分析する。接客するコンシェルジュ(販売員)は、商品の詳しい説明をするだけでなく、客の隠れたニーズを引き出す。それらの情報を出店者に提供し、商品やMDの改善などにつなげる。米国発のショールーミングストア「ベータ」、大丸松坂屋百貨店の「明日見世」と同様の手法だ。

 第二に越境ECである。2015年に高島屋とトランスコスモスの合弁で設立されたTTICは、日本製品を東南アジアや中国に売る貿易業務で実績を重ねてきた。日本のファッション企業のアジアでの店舗開発も行っている。海外の有力商業施設やEC(ネット通販)のマーケットプレイスでの実績とネットワークを持つ。日本のD2Cブランドにとって「ミーツストア」は、越境ECおよびリアル店舗での卸売りのプラットフォームとしても機能する。ここが出店者への最大のアピールポイントになる。

 川口CEOは出店者に向けて「フェーズ1としてショールーミングストア、フェーズ2として海外に向けた越境EC、フェーズ3として海外での出店といった道筋を提供できるようにしたい」と話す。5年内に「ミーツストア」で国内外10店舗の体制を目指す。

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