ビューティ

米国のビューティ業界人が選ぶ香水 トップ20

 世界のフレグランス市場は何年も衰退し続けていたが、最近ようやく復調傾向にある。調査会社のNPDグループ(NPD GROUP)によると、米国のフレグランス市場は2019年も20年も2ケタ成長を記録し、中でも香水やコロンの売り上げは61%も伸びている。香水は、パンデミックで消費を抑えていた人々にとって、待ち侘びていた贅沢とラグジュアリー感を味わえるアイテムだ。

 米「WWD」は、(米国の)業界人にベスト香水を投票してもらった。ブランド創業者やマーケター、小売り関係者、インフルエンサー、エディター、調香師、アナリスト、経営者など300人以上に聞いた。また投票するにあたり、香水のコンセプトのオリジナル性、香りのオリジナル性、店頭での売れ行き、マーケティング力、原料の品質、パッケージ・ボトルデザインを評価基準に設けた。ここでは、香りを手掛けた調香師や発売年、審査員のコメントとともに、トップ20に選ばれた香水をランキング形式で発表する。

1位 「シャネル(CHANEL)」“シャネル No.5”

デビュー:1921年
調香師:エルネスト・ボー(Ernest Beaux)
香調:アルデヒドフローラル
コメント:「香水のゴールドスタンダードだ」「現代のフレグランスの始まりとも言える香水」「長きにわたって愛される香りで、フレグランスの王者」。30ミリボトルに1000以上のジャスミンの花を含む“シャネル No.5”は、世界的なベストセラーだ。

2位「ル ラボ(LE LABO)」“サンタル33”

デビュー:2011年
調香師:フランク・フォルクル(Frank Voekl)
香調:ウッディーアロマティック
コメント:元々はキャンドルから始まった“サンタル33”は「今やカルト的な人気を誇る香水へ」。「初めてヒットしたニッチフレグランス」「ニッチフレグランスの認知度を上げ、ミレニアル世代のオピニオンリーダーの間で10年以上の人気を誇る」。

3位「ミュグレー(MUGLER)」“エンジェル”

デビュー:1992年
調香師:オリヴィエ・クレスプ(Olivier Cresp)
香調:グルマン
コメント:グルマン香水の代表格である“エンジェル”。「現代のフレグランスを象徴する大きなマイルストーン」。今もなおその人気は続き、2021年だけで1時間に27本売れた。

4位「フレデリック マル(FREDERIC MALLE)」“ポートレイト オブ ア レディー”

デビュー:2010年
調香師:ドミニク・ロピオン(Dominique Ropion)
香調:「ミステリアス エレガンス」
コメント:フレデリック・マル(Frederic Malle)は“ポートレイト オブ ア レディー”を作るにあたり、最後2つの試作を天秤にかけた。1つを妻に纏わせて、マンハッタンの市内で散歩に行くように頼んだ。10分後に散歩から戻った妻は、その間に4回もつけている香水の名前とオリジンを聞かれたという。そこから、名香が誕生したのだ。

5位「シャネル」“ココ マドモアゼル”

デビュー:2001年
調香師:ジャック・ポルジュ(Jacques Polge)
香調:アンバーフレッシュ
コメント:「シャネル」は調香師のジャック・ポルジュに、故ココ・シャネル(Coco Chanel)本人が着用していそうな香りの製作を頼んだ。今では米国で4番目に売れている香水にまで成長した。「『シャネル』をフレグランスのトッププレイヤーに押し上げ、新たな香りのトレンドを生み出した香り」。

6位「ドルチェ&ガッバーナ(DOLCE & GABBANA)」“ライトブルー”

デビュー:2001年
調香師:オリヴィエ・クレスプ
香調:シトラスウッディー
コメント:イタリア・シチリアからインスパイアされた“ライトブルー”は、調香師のオリヴィエ・クレスプが2年かけて開発した。「少ない香りの分子と僅かな自然原料を用い、自然の香りを再現したユニークな香り」。

7位「ディオール(DIOR)」“ソヴァージュ”

デビュー:1966年
調香師:エドモン・ルドニスカ(Edmond Roudnitska)
香調:アロマティックシトラス
コメント:当時、新たに開発された分子「ジヒドロジャスモン酸メチル(ヘディオン)」は香水業界で大きな革新だった。「初めてヘディオンを用いた香り。その後、ほとんどの香水で使われるようになった」。

8位「トム フォード(TOM FORD)」“ブラック オーキッド”

デビュー:2006年
調香師:Pierre Negrin(ピエール・ネグリン)、 デイヴィッド・アペル(David Apel)/ジボダン(GIVAUDAN)
香調:アンバーフローラル
コメント:「男性、女性でシェアできるベストな香り」「『カルバン・クライン』の“CK ワン”がジェンダーレスな香りの先駆者だが、“ブラック オーキッド”は最高峰だ」。

9位「ジョルジオ アルマーニ(GIORGIO ARMANI)」“アクア ディ ジオ”

デビュー:1996年
調香師:アルベルト・モリヤス(Alberto Morillas)、 アニック・メナルド(Annick Menardo)、アニー・ブザンティアン(Annie Buzantian)、ジャック・キャバリエ・ベルトリュード(Jacques Cavallier-Belletrud)
香調:シトラス
コメント:メンズフレグランスのベストセラーの“アクア ディ ジオ”はデビュー以来2500万個を売り上げた。「清潔感がある、フレッシュでみずみずしい香り」「素晴らしいテレビキャンペーンを繰り広げた」。

10位「カルバン・クライン」“CK ワン”

デビュー:1994年
調香師:アルベルト・モリヤス、ハリー・フレモント(Harry Fremont)
香調:シトラスアロマティック
コメント:「時代に先駆けてジェンダーレスな香りを提唱。80年代を代表する重たい香りから、90年代の軽く付けやすい香りへのシフトを担った香り」。“CK ワン”はタワーレコード(TOWER RECORDS)で販売された最初の香りの一つで、その販売戦略は当時革新的と捉えられた。

11位「ゲラン(GUERLAIN)」“シャリマー”

デビュー:1925年
調香師:ジャック・ゲラン(Jacques Guerlain)
香調:アンバー
コメント:初のアンバー(オリエンタル)フレグランスの“シャリマー”は「タイムレスで、構造を見ても完璧な香り」。「香りもコンセプトもセンシュアリティの代表格」。

12位「イッセイ ミヤケ(ISSEY MIYAKE)」“ロードゥ イッセイ”

デビュー:1992年
調香師:ジャック・キャヴァリエ(Jacques Cavallier)
香調:アクアティック
コメント:「みずみずしい香りの先駆者で、透明感を初めてコンセプトに用いたフレグランス」。ボトルはデザイナーの三宅一生がエッフェル塔の上で光る月からインスパイアされた。

13位「イヴ・サンローラン(YVES SAINT LAURENT)」“オピウム”

デビュー:1977年
調香師:ジャン・アミック(Jean Amic)、ジャン・ルイ・シウザック(Jean-Louis Sieuzac)、レイモンド・シャイヨン(Raymond Chaillan)
香調:アンバー
コメント:ローンチ数時間で完売した名香。麻薬のアヘンからインスパイアされたスキャンダラスな香りは、発売した当日はテスターが盗まれ、ポスターは取り去られるなど、爆発的な人気を誇った。

14位「ディオール」“ジャドール”

デビュー:1999年
調香師:カリス・ベッカー(Calice Becker)
香調:フローラルブーケ
コメント:「フローラルカテゴリーを代表する香りで、初めての世界的ヒット」。NPDグループによると、“ジャドール”は米国のウィメンズフレグランスのトップ5に入るという。

15位「エスティ ローダー(ESTEE LAUDER)」“ユースデュウ”

デビュー:1953年
調香師:ジョセフィン・カタパーノ(Josephine Catapano)
香調:アンバー/スパイシー
コメント:50年代初期、エスティ・ローダー(Estee Lauder)は、女性が男性に香水を買ってもらう習慣を不思議に思った。そこで女性が自ら購入できる香りとしてバスオイル“ユースデュウ”を発売した。

16位「クリニーク(CLINIQUE)」“アロマティクス エリクシール”

デビュー:1971年
調香師:ベルナード・チャント(Bernard Chant)
香調:シプレフローラル
コメント:開発に2年以上、700以上の原料を要した“アロマティクス エリクシール”。初めてエリクシール(霊薬・万能薬)という位置付けの香りで、体やマインドに特定の作用があるとされた。

17位「メゾン フランシス クルジャン(MAISON FRANCIS KURKDJIAN)」“バカラ ルージュ”

デビュー:2015年
調香師:フランシス・クルジャン(Francis Kurkdjian)
香調:アンバーフローラル
コメント:2015年に、「バカラ(BACCARAT)」の創業250周年を記念してクリスタルボトルに収められた250個限定の香りとして登場。今は米国のフレグランストップ10に入り、SNSでも人気だ。

18位「フレデリック マル(FREDERIC MALLE)」“カーナル フラワー”

デビュー:2015年
調香師:ドミニク・ロピオン
香調:ベジェタルアディクション
コメント:チュベローズを主原料にした“カーナル フラワー”。チュベローズの香りを特定するために、フレデリック・マルは調香師のドミニク・ロピオンに毎日花束を渡したという。フレデリックは度々、「妻よりも多く(ドミニク)に花を渡した」とジョークにしている。

19位「ナルシソ ロドリゲス(NARCISO RODRIGUEZ)」“フォーハー”

デビュー:2003年
調香師:クリスティーヌ・ナジェル(Christine Nagel)、フランシス・クルジャン
香調:フローラルムスク
コメント:「『シャネル』の“No.5”以来の美しさが光るボトル」「かつて古臭いとされていたシプレの香りをアップデートした」。ナルシソ・ロドリゲス(Narciso Rodriguez)が高校生の時に愛用していたエジプトのムスクオイルからインスパイアされている。

20位「ヴィクター&ロルフ(VIKTOR & ROLF)」“フラワーボム”

デビュー:2005年
調香師:オリヴィエ・ポルジュ(Olivier Polge)、カルロス・ベナイム(Carlos Benaim)、ドミティーユ・ベルティエ(Domitille Berthier)
香調:フローラル
コメント:2021年、“フラワーボム”は米国で1分に1個売れたベストセラーだ。

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