ベルナール・アルノー(Bernard Arnault)LVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON以下、LVMH)会長兼最高経営責任者(CEO)は2日、首相官邸で松野博一官房長官を表敬訪問した。アルノー会長の三男であるフレデリック・アルノー(Frederic Arnault)タグ・ホイヤー(TAG HEUER)CEOと、ノルベール・ルレLVMHジャパン社長も同席した。
訪問は官邸記者クラブに公開され、後半は記者が退出し、クローズで対話が行われた。LVMH側からは、以下の提案がされた。①日本の素材等が使用されている場合には、商品説明欄に具体的な産地名を記載するなど、日本の産地が有する高い技術力の海外発信により一層協力する②高品質な素材等を提供する日本企業との連携を発展させて、日本の企業、特に中小企業各社や職人の成功に貢献③日本の若手アーティストや工芸家とのコラボレーションをより推進する。
アルノー会長の日本政府への表敬は初。同会長はこれまでアンゲラ・メルケル前ドイツ首相やトニー・ブレア元英国首相、ドナルド・トランプ前米国大統領、バラク・オバマ元米国大統領などと会談を行ってきた。
今回の訪問のきっかけのひとつには、経済産業省ファッション政策室が昨年から進めてきた有識者会議「これからのファッションを考える研究会 ~ファッション未来研究会~」のアクションがあると思われる。同研究会は、国内ファッション産業が海外需要を獲得するために必要な方策を議論する場で34人の有識者が参加。ノルベール・ルレLVMHジャパン社長も委員を務めた。議題は幅広く、その中の2つが次の課題であった。①日本企業(繊維産地など)の技術は海外でも高く評価されているにも関わらず、多くがブランディングに注力しきれておらず、最終製品の価格に見合う十分な評価を得られてない②海外から高い評価を得ている日本のアーティストも多数存在するものの、素材単体で輸出するよりも、利益率の高い最終製品の輸出額が他国と比較して低い。今回の提案はこれらに対するアクションといえる。
なお、「これからのファッションを考える研究会 ~ファッション未来研究会~」の報告書は2日に公開されており、巻末にはシドニー・トレダノLVMHファッショングループ会長兼CEOが「LVMHグループは日本の皆さんと同じようにクラフトマンシップに対して情熱をもっている。また伝統、素材、デザイン、ノウハウにとても興味を持ち、常に卓越性をもとめている。重要なことは伝統のなかにも新しくて望ましいものを探すこと」などとコメントを寄せている。