「エミリオ・プッチ(EMILIO PUCCI)」は4月末、新アーティスティック・ディレクターのカミーユ・ミチェリ(Camille Miceli)による最新コレクションをイタリアのカプリ島で発表した。フランス出身のミチェリ=アーティスティック・ディレクターは、15歳から「シャネル(CHANEL)」や「アライア(ALAIA)」などでインターンとして経験を積み、「シャネル」や「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」の広報担当を務めた後、LVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON)傘下の複数ブランドではコスチュームジュエリーやレザーグッズの監修やコンサルティングを担った。カミーユによる新コレクションの発表に際して、「エミリオ・プッチ」はブランドのルーツに立ち返り、「リゾートに特化したブランド」としてリブランディングすると発表していた。彼女に、その想いを聞いた。
WWDJAPAN(以下、WWD):「リゾートに特化したブランド」とは?年に1度、リゾート・コレクション(一般的には、春夏と秋冬の間に発表するコレクションとして知られている)しか発表しない、ということ?
カミーユ・ミチェリ「エミリオ・プッチ」新アーティスティック・ディレクター(以下、カミーユ):「リゾート」とは、業界の当たり前じゃなくて、ブランドのDNA。年に1度だけリゾート・コレクションを発表するのではなく、“リゾートマインド”なカプセル・コレクションを毎月ドロップする体制に切り替えるの。「エミリオ・プッチ」と聞かれたらビーチウエアを連想する人が多いくらい、私たちにとってリゾートシーンは馴染みのあるもの。でも同時にブランドは、鮮やかなスキーウエアを発表して一世を風靡したこともあるの。季節を問わず、リゾートは「エミリオ・プッチ」にとって大切よ。コロナを経た今は、「エスケープしたい」というマインドも高まっている。そんな想いに寄り添いたい。私たちにとって「リゾート」とは、ウェルビーイングなマインドセットのことよ。
WWD:具体的には?
カミーユ:スポーティな洋服はもちろん、シューズは快適性にこだわった。ヒールもあるけれど、プラットフォームシューズは欠かせないわ。こだわったのは、素材。パディングを筆頭に、とても柔らかな素材使いにこだわった。こうした洋服を身にまとえば、空港だって、旅先だって、人生全般が楽しくなるハズよ。毎日を笑顔で過ごすこと、それがウェルビーイングな「リゾート」なの。と同時に、私たちの柄は、着る人だけでなく、見る人も笑顔にしてくれるわ。
WWD:プリント柄は、「エミリオ・プッチ」のアイデンティティーでもある。
カミーユ:とても大切な存在。でも最近の「エミリオ・プッチ」は、プリントの中に“人間性”を欠いていたと思うの。昔の柄は、すべて手作業。だからこそ不完全で、そこには“人間性”が宿っていたわ。だから今回発表したプリント柄は、すべてを一から手作業で描きなおしたの。代表的な「ジオメトリック」を筆頭に、「マルモ」や「フローラル」など、スタートしてから3回目にドロップするまでのコレクションに使った、6つの柄を描き直したわ。とっても大変な作業だったけれど、絶対に必要なことだった。最初は手間かもしれないけれど、きっと慣れるわ。だって「エミリオ・プッチ」は1960~70年代、コンピューターを使うよりずっと素早く、数々のモチーフを描き、世に送り出したんだもの。
WWD:ウエアを手掛けるのは、今回が初めて。不安や難しさはなかった?
カミーユ:長年ファッション業界に携わり、カール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)やマーク・ジェイコブス(Marc Jacobs)、ニコラ・ジェスキエール(Nicolas Ghesquiere)と仕事をしながら、彼らを観察してきたわ。そこで素晴らしいコレクションには、素晴らしいチームが欠かせないことを学んだの。「エミリオ・プッチ」は、素晴らしいチーム。だから不安はなかったわ。厄介なのは、私が完璧主義なこと(笑)。アクセサリー、特にジュエリーにはミリ単位の細かさが求められるから。
WWD:4月末には、ゲストをカプリ島に招き、さまざまなアクティビティーを通してコレクションを発表した。
カミーユ:ファッションショーより、ずっとラクだったわ!ゲストは、土曜の夜に到着すると、まずは「エミリオ・プッチ」の柄に覆われたバーなどを筆頭に、“プッチの海にダイブ”するの。翌朝はヨガやゲームを楽しみながら、カフタンドレス姿のモデルをチェック。そして、みんなでダンスよ(笑)。こうしたコンテンツは、ウェブサイトを通してみんなに共有するつもり。私たちのコアバリューは「リゾート」だけど、今はスピーディな社会でもあるから、デジタルも頑張らなくちゃ。サイトでは、水着もセーターも、いつでも買えるわ。だって日本が冬でも、ブラジルは夏よ!世界のどこかには、必ず「リゾート」を楽しめる環境、楽しんでいる人が存在するんだから、「エミリオ・プッチ」の可能性は大きいわ。