染色大手の小松マテーレは、中山賢一・代表取締役会長(80)が名誉相談役に退くと発表した。退任は6月24日の株主総会後になる。中山会長は、1987年6月に小松精練(現小松マテーレ)の社長に就任。中興の祖として長らく同社を率いてきた。日本の繊維産業が縮小し、それまで大半を占めていた大手素材メーカーからの受注加工が減少するなど、大きな変革期を迎える中で、パリの「プルミエール・ヴィジョン」な見本市への出展などを通して、欧州のラグジュアリー市場の開拓の陣頭指揮などを取ってきた。その甲斐もあって同社は欧州で日本を代表するテキスタイルメーカーとして認識されるまでになった。
また、海外生産の拡大などで日本の繊維産業が縮小を続ける中にあっても、東レや北陸産地企業と連携しながら石川県や福井県など北陸産地全体の底上げにも注力。北陸産地が現在も世界で有数の競争力を誇る合繊産地であり続けている牽引役にもなってきた。
2022年3月期の同社の業績は売上高が前期比4.8%増の314億円、営業利益が同12.5%増の15億円、経常利益が同12.4%増の21億円、純利益が同20.7%増の21億円。総資産456億円に対し、自己資本比率は79.0%。一株あたりの純利益は52円26銭、総資産経常利益率は4.2%で、委託が中心の染色加工業の中で突出した財務体質となっている。
中山会長が退任後に経営体制も大きく変わる。11人だった取締役は9人に減少する一方、社外取締役は3人から4人に増員する。また、代表取締役は、東レ出身の佐々木久衛社長一人になる。佐々木社長は、中山会長の退任について「(中山会長)本人はいたって大変元気だが、大きな変革期だからこそ次世代の経営陣が立ち向かうべきだという申し出があった。私は、獅子が我が子を千尋の谷に落とすということだと受け止めた。新しい経営体制で、さらなる成長を成し遂げたい」と語った。