未曽有の原料高や円安にさらされ、食品や日用品の値上げが相次いでいる。アパレル業界もコスト高騰は同じだが、慢性的な供給過剰になっているため、一律値上げに踏み切る企業は少ないのが現状だ。そんな中、注目を集めるのは「鎌倉シャツ」の愛称で知られるメーカーズシャツ鎌倉の動きだ。定番のドレスシャツを5900円(税別)の標準価格で販売する同社は、セールをしない明快な価格設定と、メイド・イン・ジャパンの高品質なモノ作りが支持を集めてきた。標準価格は変更されるのか。生産部門と統括するサダ・マーチャンダイジングリプリゼンタティブの佐野取締役に聞いた。(この記事はWWDJAPAN2022年5月16日号からの抜粋に一部加筆しました)
当社は1993年に高品質な日本製シャツを4900円のお値打ち価格で売り出し、2017年に現在の5900円に変更して現在に至ります。30年近い歴史の中で、人件費、原材料費、為替の3つが同時にこれほど高騰したのは初めて。対策を練っている間にも、コストがみるみる上昇しています。コロナ前に比べて原綿価格が2倍以上になったのを含め、製造原価は単純に2割上がりました。時期までは明言できませんが、小売価格の値上げは避けられないと考えています。
コスト高だから上げるというよりも、日本製の高品質なシャツを維持するためのモデルチェンジだと捉えています。危機をバネにして、今後も持続可能なモノ作りの仕組みを構築したい。品質も一層レベルアップし、お客さまを満足させる。
そもそも価格転嫁できない繊維業界は異常だと思います。(長引くデフレで)素材メーカーも縫製工場もコスト高をがまんするのが習い性になってしまった。大手アパレルは大半を海外生産に移し、その工賃水準を国内にまで持ち込むようになりました。それでいて日本製ならではの高品質と創意工夫を現場に要求します。国内の縫製工場はアジアからの技能実習生に頼りっぱなしだったのが、コロナ下で確保が難しくなりました。でも日本人を募集しようにも最低賃金が敬遠されて人材が集まらない。今のままでは縫製工場の経営も存続が危ぶまれる状況です。
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