綿花が2.2倍、物流費が7.8倍、縫製工賃7%アップ、物流の混乱に伴う納品遅れ、それら全体に関わる為替は20年ぶりの歴史的円安水準——。日本のアパレル産業は、大きな岐路を迎えている。衣料品の生産・調達コストはこの1年でかつてない上昇を続けており、店頭価格の値上げは待ったなしの状況になっている。(この記事はWWDジャパン2022年5月16日号からの抜粋です)
すでに食品や外食、日用品、電気代などアパレル以外の分野では、値上げラッシュが始まっている。食品は、円安が進む以前から原料高の影響で値上げに動いており、円安の進行やロシアのウクライナ侵攻に伴い穀物価格が上昇する中で、今後はさらなる値上げになる公算が高い。
一方、シーズンごとに新作を出す衣料品は、定番品の割合が少なく「値上げ」の説明が難しい。加えて、この数年は徐々に改善が進んでいるものの、大量生産の供給過剰体質で、セールなどでの値引き販売が常態化してきた。今春夏物でも、原料高、燃料高、輸送コスト高によって生産コストは上昇したものの、春夏物の値上げを表明したアパレル・小売り企業は一部にとどまった。
年明け以降、円安が進行し、大半を海外生産している衣料品はさらに調達コストが上昇する。現在、衣料品サプライヤーとアパレル・小売り企業の間で秋冬物の商談がピークを迎えているが、ある繊維商社の幹部は「日本のアパレルはこの30年、値下げをしたことはあっても値上げをしたことはなかった。コスト上昇は明らかでも、値上げという行為自体に多くのアパレル・小売り企業は恐怖というか、アレルギー反応をしている」と指摘する。
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