「WWDJAPAN」では、有力アパレル企業に「値上げ」に関するアンケートを実施した。ブランド・業態によって差はあるものの、強い値上げ圧力を受けている実情が見えてきた。一部商品に関しては、今年の秋以降に値上げに踏み切るケースが多いようだ。ただ、食品・外食企業のような主力品の一斉値上げは現実的ではない。品番数の多いアパレルは、毎シーズン常態化している値引きを抑制するなど、全体のMDバランスの最適化に軸足を置く。(この記事はWWDジャパン2022年5月16日号からの一部抜粋です)
回答した65人中62人の担当者が製造原価はアップしていると答えた。綿花やウールなど原材料費、物流費などの高騰、そして今年に入って加速した円安が追い打ちをかけた。製造原価の上がり具合はブランド・業態で差があるものの、小売価格の現状維持は難しいという認識でほぼ一致する。毎シーズン、商品が変わるアパレルでは、昨年の価格と比較できない例がほとんどだが、一部商品について「値上げ済み」「値上げ予定」と答える担当者が多い。
各社が値上げに慎重なのは、過去の消費増税などの際の落ち込みを経験しているからだ。今回は消費増税のように一斉に上がるわけではないが、日常的に購入する食品や外食チェーン、ガソリン代、電気代、ガス代、水道代などの生活分野の値上げが次々に発表される中、衣料品への支出がこれまで以上に厳しくなることは間違いない。
そのため単に値上げするのではなく、価格に見合った付加価値の向上を同時に行うと答える人がほとんどだ。ショッピングセンターに出店するSPAの担当者は「付加価値が出しやすいボトムス、アウター、ニットなどおよそ7割の商品が値上げ予定となる。コロナが収束しても客数で稼ぐビジネスは限界。大量消費よりも価値の創造に重きを置いていく」という。婦人服SPAも「安いだけでは購買してもらえない。価値(デザイン、素材など)のある商品群を3割作成し、その分通常商品よりも値上げした」と明かす。
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