「他社とは差別化した商品を作る」。言うは易し、行うは難しとはこのことで、商品の同質化が進む百貨店やショッピングセンターの衣料品売り場を見れば明らかだ。苦境のアパレル企業は、素材やデザイン開発に資金を割く余裕もないケースも多い。だが、できることは何もないわけではないはずだ。自分の所属部署やブランド以外の意見にも、R&D(研究・開発)につながるヒントは隠れている。若い世代の切り口や感性が、新しいイノベーションにつながるかもしれない。(この記事は「WWDJAPAN」5月6日号からの抜粋です)
三陽商会は全ブランドの知恵を結集
個性を凝縮した“頂上商品”を開発
昨年夏の某日、東京・四谷の三陽商会本社会議室。大江伸治社長と「マッキントッシュ ロンドン(MACKINTOSH LONDON)」「ポール・スチュアート(PAUL STUART)」など全ブランド事業、技術開発部門の責任者が一堂に会し、話し合いの場を持った。「三陽商会らしい商品とは何か」「お客さまはどんな服を求めているのか」——。モニター越しに福島と青森の自社工場の責任者も加わった会議は、1時間以上に及んだ。
この「商品開発委員会」は大江社長自ら旗揚げし、昨年5月に発足したプロジェクトだ。加藤郁郎・専務執行役員 事業本部長が委員長となって同社の全ブランド、技術開発部門、自社工場の責任者を集めた会議を定期的に実施し、これまでに延べ9回を数えた。現場のデザイナーやMD、若手社員なども交えながら、ブランドの垣根を越え、同社が目指す「品質・品位ある服作り」(大江社長)にふさわしい素材やパターン、デザインなどを話し合っている。
委員会の目下のミッションは、それぞれのブランドにおいて個性や世界観を結集したフラッグシップモデル=“頂上商品”を作ること。その下ごしらえとして、三陽商会の歴史の中でのヒットアイテムや定番商品を集め、ときにはその服を“解剖”し、売れた要因を分析・抽出している。「30年以上この会社に在籍しているが、全ブランドのトップが集まり、モノ作りのことだけを話す会議は初めて。『前年はこれが売れた』『数字が悪かった』といった類の話はしない。元々服好きが集まった会社だから、『こんな服があったら』と想像をふくらませている」と委員会事務局の西岡宏和・事業本部技術開発課長。
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