企業が期ごとに発表する決算書には、その企業を知る上で重要な数字やメッセージが記されている。企業分析を続けるプロは、どこに目を付け、そこから何を読み取るのか。この連載では「ユニクロ対ZARA」「アパレル・サバイバル」(共に日本経済新聞出版社)の著者でもある齊藤孝浩ディマンドワークス代表が、企業の決算書やリポートなどを読む際にどこに注目し、どう解釈するかを明かしていく。今回は、2021年度世界アパレル専門店売上高ランキングから潮流を読み取る。(この記事は「WWDJAPAN」2022年5月16日号からの抜粋です)
筆者のライフワークの一つとして毎年恒例になっている世界アパレル専門店の売上高ランキングの2021年版を算出しました(下の表参照)。1位から4位までは不動で、5位だったLブランズがバス&ボディーワークス(BATH & BODY WORKS)とヴィクトリアズ シークレット(VICTORIA’S SECRET)の2社に分かれたため、プライマーク(PRIMARK)が浮上しました。でもヴィクトリアズ シークレットは単体でも6位なので、頑張っているなと。バス&ボディーワークスはアパレル企業とは言えないので今回から除外しました。そしてルルレモン(LULULEMON)が初めてランクインし、しまむらは過去最高益でしたが、為替の関係もあり順位を落としました。今回はこのランキングで私が気になったこと4つをお話しします。
1.アメリカの旺盛な景気
ファーストリテイリングの決算会見でも触れられましたが、全体的にアメリカの好景気に支えられた感があります。H&Mも中国では不買運動で売上高が3割下がっているのに、それ以上にアメリカが増えてるから、全然へっちゃらです。アメリカンイーグル アウトフィッターズ(AMERICAN EAGLE OUTFITTERS)は黒字化し、営業利益率が10%超えでした。ギャップ(GAP)も米国内の「オールドネイビー(OLD NAVY)」がけん引して黒字化です。インディテックス(INDITEX)もスペインに次ぐ売り上げ国はアメリカです。
日本やヨーロッパはコロナ給付金を企業に出したのに対し、アメリカは個人に定期的に何回も出しました。それで働かない人が増えて、物流などは大変なことになってしまったけれど、消費には確実にお金が回っていて、昨年のアメリカの小売業は未曽有の好景気といわれています。今年3月の利上げまでは株価も総じて高かったですね。アメリカ経済のパワーを感じる期でした。
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