ファッション

「ドクターマーチン」とアーティスト山瀬まゆみがタッグ 限定店を彩るカラフルなパンクができるまで

 「ドクターマーチン(DR.MARTENS)」は、2022年春夏の新作のサンダルをそろえたポップアップストアを伊勢丹新宿店 本館2階婦人靴プロモーションスペースで5月24日まで開催中だ。店内にはシルバーのスタッズを施した“クラリッサ II クアッド ハードウェア(CLARISSA Ⅱ QUAD HDW)”(税込2万4200円)や、ピンクやイエローのパステルカラーが特徴の“ヴォス モノ(VOSS MONO)”(同1万9800円)をはじめ、ストラップを飾った定番の“グリフォン(GRYPHON)”(同1万9800円)など、バリエーション豊富に用意する。

 ポップアップの空間を手掛けたのは、アーティストの山瀬まゆみだ。彼女が得意とする抽象的なモチーフと、カラフルな色がフロアを彩る。山瀬は高校卒業後、ロンドン芸術大学でファインアートを学んだ後、 “肉体のリアリティと目に見えないファンタジーや想像の相対”をコンセプトにペインティングとソフトスカルプチャーを制作している。2018年には「コム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS)」と、2021年にはスポーツブランドとのコラボレーションを発表した。現在は東京を拠点にし、アーティストとしてだけでなく、ライター・編集者としても活動している。クリエイティビティの最前線を行く彼女に、「ドクターマーチン」とのコラボレーションや自身のキャリアについて語ってもらった。

WWD:「ドクターマーチン」とのコラボレーションに至った経緯は?

山瀬まゆみ(以下、山瀬):ペインターで友人のMHAKが「ドクターマーチン」で展示をしていたことがきっかけで担当の方を紹介してくれました。その方ももともと私のことを知ってくれていて、そこから今回のポップアップの空間を作ってほしいと声を掛けてもらいました。

WWD:ポップアップ空間のテーマは?

山瀬:“サンダル”と“夏”をテーマに、サマーシーズンを連想させるオレンジや黄色、緑などの色を使ってカラフルに仕上げました。「ドクターマーチン」といえばパンクスピリット溢れる強いイメージです。そのブランドらしさを表現したかったので、私が得意とする抽象的なモチーフや落ち着いたトーンを用いながら、シグネチャーであるステッチを自分なりの解釈でポップに描いてみました。

アクリル絵具で描くカラフルな抽象画

WWD:抽象的なモチーフの作品を描き始めたのはいつから?

山瀬:通っていた高校で美術と音楽の授業どちらかを選ぶ方針があり、音楽が苦手だったので美術を選択しました。授業で「好きな絵を描いていい」とキャンバス一枚を渡されて、何気なく描き始めたのがきっかけでしたね。美術の先生に見せたら「いいじゃない!」と褒めてもらえたこともあり、そこから今の作風を築き上げていきました。

WWD:有機的な曲線と穏やかな色味は高校時代から?

山瀬:高校時代に描いていたものはもっとダークトーンでおどろおどろしく、絵的にも生々しいニュアンスでした。青春時代はすごく多感な時期だから、悩みもたくさんあるじゃないですか。今思えば、その時の心情が作品にすごく表れていますね。年齢を重ねることで心が穏やかになり、今のような柔らかいトーンになったのかもしれません。

WWD:ワークショップやこの空間を通して伝えたいことは?

山瀬:ギャラリーのようにキャンバスを飾っているわけではないので、作品一つ一つを説明するのは難しいですね。でも、目の前を通ったときに「かわいい!」と気になってもらえるだけでうれしいです。期間中にワークショップも行いましたが、お客さまとのコミュニュケーションを通して山瀬まゆみというアーティストを知ってもらうきっかけになれたらいいですね。

アートが生み出す大きなエネルギー

WWD:アーティストを目指したきっかけは?

山瀬:日本の美術大学へ進学するには、専門の予備校に通わないといけないんです。でも、いざ受験勉強をしようと思っても、予備校に入っていないし、何も準備していなかった。そんなとき、高校の美術の先生が、ロンドンの大学を勧めてくれて、ロンドン芸術大学に進学しました。当時は、母親がファッションデザイナーということもあり、興味があったファッションを学ぼうと考えていました。ただ、ポートフォリオを作る入試課題でドローイングなどの課題制作に新鮮さを感じ、ファインアートに出合いました。自分の中で一番自由な表現ができるのがファインアートだったので、専攻を変えて改めて勉強することにしました。

WWD:激動の時代の中で、アートが持つ力とは?

山瀬:アートは直接的ではないからこそ、与えられるものがすごく大きい。アートの良さに気がつくと、私たちの生活に欠かせない水よりも人を満たせる力があると思っています。特にコロナ禍においては、私も周りもすごくヒリヒリとした時間を過ごす中で、不安を和らげてくれたのがアートでした。私は描くことで心が穏やかになったので、すごく助けられましたね。私が手掛けた作品や空間を見ることで、ポジティブな気持ちになる手助けができればうれしいです。

WWD:今後のプロジェクトについて教えてください。

山瀬:5月28、29日に開催される音楽フェス「グリーンルーム フェスティバル(GREENROOM FESTIVAL)」のアートスペースで展示を行います。20人ぐらいのアーティストたちと一緒に参加するので、ぜひ足を運んでもらえたらうれしいです。

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