双子モデルのAMIAYAは、原宿のストリートで誕生し、今や東京のファッションシーンと世界をつなぐ架け橋のような存在だ。2011年には、マークスタイラーから自身がクリエイティブ・ディレクターを務めるアパレルブランド「ジュエティ(JOUETIE)」を立ち上げ、10〜20代の層を中心に支持を集める。「ファッションを謳歌し、自由に表現する楽しさを届ける」ことをモットーに、ポジティブなパワーを発信してきた2人は、環境問題や人権問題など業界の負の側面への関心が高まる今、「私たちが発信すべき責任あるメッセージとは何か」を自問する。本連載では、AMIAYAがさまざまな角度からサステナビリティを学ぶ姿を追う。連載3回目は、「持続可能なファッション」を模索するD2Cブランド「リン(WRINN)」の川島幸美デザイナーに話を聞いた。
AMI:川島さんは過去に「アウラアイラ(AULA AILA)」や「アウラ(AULA)」といったブランドを手掛けていらっしゃいました。それらを辞めて、あらためて「リン」を立ち上げた背景を教えてください。
川島幸美「リン」デザイナー(以下、川島):以前のブランドでは、半年ごとにコレクションを発表し、商品が店頭に並んだ3カ月後にはセールに出して、また次の商品を作るというサイクルを当たり前にこなしていました。でも正直すごく忙しかったし、大変でした。このままこのサイクルを回し続けるべきなのか疑問に感じていたころ、パリで出会った有識者から温暖化で地球に住めなくなる未来が迫っていることを聞きました。もともとオーガニックコスメやフードが好きで、環境問題には関心がありましたが、このころから自分がすごいスピードで生産しているものと環境汚染のつながりに向き合うようになりました。本当は既存のブランドを変えたかったけど、コンセプトが確立したブランドでは難しかったので、ゼロからもう一度自分が本当に伝えたいことを表現できる場所を作ろうと決めました。
AYA:ファッションのサイクルに疑問を持っていたからこそ、「リン」ではセールをしない売り方を実践しているんですね。
川島:はい。受注生産を取り入れ、在庫は付き合いのある工場と小ロットで生産しています。これまで大手企業で育ってきたので、セールを前提とした価格のつけ方を当たり前だと思っていました。でも、一度立ち止まって考えると、きちんと商品に合う価格でセールをせずに売り切ればその分の利益も還元できるし、もっと安く消費者にも提供できる。それに売れ残りの廃棄も出ない。まずはここから変えようと思ったんです。
AMI:考え方を見直したことで、デザインの仕方も変わりましたか?
川島:時代の流れや今のテンションを洋服に落とし込んでいることや、気持ちのこもった商品を届けたい思いは変わりません。ただ、長く着てもらうことが前提となり、シーズンごとの打ち出しはあまり意識しなくなりました。素材に関しては、リサイクル素材や認証の取れたオーガニックコットンなど背景により意識を向けるようになりました。
AYA:商品の価格帯も買いやすくて驚きました。ターゲット層を意識しているのでしょうか?
川島:ターゲット層は定めていません。エイジレスで幅広い人たちに着てもらいたい。でも、オンラインで買いやすい価格は意識しています。原価率は高いけど、なるべく少人数のチームでランニングコストを抑えるように努力しています。
ブランド名はモノづくりをする上で大切にしたいことの頭文字
AMI:私たちはまさに移り変わりの激しい業界の中にいて、どんな発信をするべきなのか日々考えています。「リン」の軸は何ですか?
川島:ブランド名の「WRINN」はモノづくりをする上で大切にしたいことの頭文字を取りました。「Wastes(ごみを出さない)」「Recycle(資源を無駄にしない)」「Improve(生産者の生活環境を改善する)」「Nature(土壌を守る)」「No more animals(動物の毛皮を使用しない)」です。これらを軸に、オーガニックコットンやリサイクル素材、植物由来の繊維などを主に使用しています。私が生地を探し始めたころは、まだまだ選択肢が少なかったですが、最近はリサイクル素材のバリエーションも増えましたし、環境負荷の低いプリント技術も出てきたので、これからさらに表現の幅を増やしていきたいです。
AYA:一方で、サステナブルなファッションを打ち出すことに躊躇はありませんでしたか?
川島:確かに最初は勇気がいりました。でも、ファッションデザイナーである限り、自分の思いを発信しなければ意味がない。「リン」を立ち上げた時、本当に伝えたいことは何かをすごく考えました。先日はマギーとコラボしてゴルフウエアを発売しましたが、彼女もブランドの考え方に共感して「『リン』とであれば一緒にモノづくりをしたい」と思ってくれました。そんな仲間が少しずつ増えているのを感じます。
AMI:私たちも洋服を通して誰かの背中を押したいと強く思っています。川島さんはそれをちゃんと形にしてエイジレスに届けている姿勢に、勇気をもらいました。私たちも日々葛藤を抱えていますが、できるところから変化を生み出したいと思いました。
川島:2人がこの連載を始めたように、何かしたい、変えたいと思うことが第一歩。サステナビリティは正解がなく、先が見えないので私もたくさん苦しみました。でも、いろんな人との会話にヒントがありました。こうして同じ意識を持つ人が増えてとてもうれしいです。これからも一緒に発信できたらいいですね。
AYA:私たちも川島さんの背中を追いかけていきます!