これまで9つのグラミー賞を受賞し、世界的影響力を持つ歌手でありつつ、ファッションやビューティブランドを持つ起業家でもあるリアーナ(Rihanna)。2022年1月にラッパーのエイサップ・ロッキー(A$AP Rocky)との第1子を妊娠していることを公表して以来、クロップトップやシースルーアイテムを取り入れ、積極的にお腹を見せる斬新なマタニティーコーデで話題をさらっていた。海外メディアなどによれば、5月13日に出産したようだ。お腹をカバーするマタニティーコーデが主流だったことに対して、大胆に“魅せて”いくあり方を示したリアーナ流マタニティーファッションの影響力を考える。
22年1月に、初めて大きなお腹で公の場に登場した際には、「シャネル(CHANEL)」のビンテージだというビビッドピンク色のダウンコートを前開きで着用した。複数のファッションECサイトからセールアイテムを一覧できるサービスを提供する「ラブ・ザ・セールス(LOVE THE SALES)」は、その後48時間でキーワードの検索数が、“ピンク ダウンコート”が312%、“パールネックレス”が81%、“ブルー ダメージジーンズ”が562%上昇したと発表した。
パリ・ファッション・ウイークで「ディオール(DIOR)」のショーに参加した際は、同ブランドのシアー素材のベビードレスを選択。「オフ-ホワイトc/o ヴァージル アブロー(OFF-WHITE c/o VIRGIL ABLOH以下、オフ-ホワイト)」のトリビュートショーにも、同ブランドのレザードレスを着用して出席した。「ヴォーグ(VOGUE)」の4月号では、赤いレースのボディースーツを着て表紙を飾った。同ルックにより、2時間で“レース ボディースーツ”の検索数が191%上昇した。
リテール業界の分析を行う会社エディテッド(EDITED)は、リアーナの“型破り”なマタニティーファッションは、ブランドや小売店が妊婦向けのベーシックなアイテム以外にも、「お腹の膨らみを強調するスタイルを販売する機会」を生み出していると述べる。同社によれば、すでにクロップトップの取り扱いは前年と比ベて1084%増加し、それに合わせてレギンスや体のラインが出るスカートの需要が増えていると言う。これらはY2K(2000年台のリバイバルファッション)のトレンドにインスパイアされたベビーTシャツや、ローライズのボトムスとも融合したトレンドになっている。
ほかにも、肌見せを積極的に取り入れたマタニティースタイルの影響で、シアー素材の需要が増している。エディテッドによると、メッシュ加工が施されたトップスやドレス製品は208%増加。多くのブランドが、体のラインが出るシルエットだけでなく、袖部分や首元にシアー素材を取り入れた商品の開発に乗り出している。これまでヌードカラーやニュートラルカラーがマタニティーファッションの主流であったが、黒いマタニティーウエアの需要は6%減となった。一方、アメリカとイギリスにおけるマタニティー市場の8%で、グリーンが人気カラーのトップ8に食い込んだ。ワンピースやトップスにおいては、ピンクやブルーも人気だという。
中でも注目なのが、ジーンズ業界への影響だ。すでに「ラジャンス(L’AGENCE)」「セザンヌ(SEZANE)」「ハッチ(HATCH)」といったブランドが、マタニティーのジーンズコレクションを展開。快適で伸縮性のあるレギンスは依然として定番アイテムであるが、エディテッドは、1月1日〜4月10日の期間中にマタニティー関連の小売りで販売されたボトムスの21%がジーンズだったと発表。前年の同期間中と比べ、マタニティージーンズの需要は25%増加したという。なお、同期間中におけるレギンスの需要は22%から20%に減少した。
一方で、Z世代を中心に盛り上がりを見せるY2Kトレンドのアイテムが、マタニティーウエアでも人気となるかどうかについて、エディテッドはやや慎重な見解だ。「リアーナが妊娠を公表した時にはいていたローライズのバギージーンズはアイコニックだったが、まだ(妊婦の間で)普及はしていない。ストレッチ機能のあるスキニーでスリムなスタイルが、マタニティーファッション市場では依然として人気が高い。腰履きできるバギージーンズは実用的ではないかもしれないが、そのゆったりとした着心地がマタニティーウエアを新しい方向性に導く可能性を秘めている」と分析した。