アバハウスインターナショナルはこのほど、OMO(オンラインとオフラインの融合)型のショールーミングストアを東京・代官山の同社ビル「スピークフォー(SPEAK FOR)」にオープンした。店舗は2層に分かれ、地上2階は物販フロア、地下2階はアートの展示やイベントなどを行う多目的フロアとして活用する。
物販フロアにおいては、自社ブランド「アバハウス(ABAHOUSE)」などのオリジナル商品は一部展開しているものの、ラインアップの多くが他ブランドとのコラボや別注アイテム、デザインをオーダーできるTシャツなど、特別感のある商品ばかり。在庫は抱えておらず、気になった商品があれば付帯するQRコードを読み取り、同社の公式ECで購入する。体験価値のある実店舗と利便性の高いEC、双方の利点を生かした購入体験を通じて双方のクロスユーザーを増やす。規模の小さい企業や独立系デザイナーなどの負担を減らすため、展示作品やコラボ商品の販売金額から一部を徴収する仕組みにした。一方、多目的フロアでは気鋭のアーティストの展示などを定期的に入れ替え、来店意欲を喚起。時には物販エリアにも関連商品を並べるなどして、館全体で世界観を演出する。
同社はかつて「スピーク フォー」にはメンズブランド「5351プール・オム(5351 POUR LES HOMMES)」の旗艦店を構えていたが、コロナ禍の2021年11月にこれを閉めた。「新型コロナは店舗の意味を再考するきっかけになった。お客さまが『この商品が欲しい』と決めうちで探しに来て、ご購入頂いて終わりというような店は今、果たして必要とされているのか。それよりも、ふらっと立ち寄れば何か面白いものが見つかるというワクワク感があり、同時にブランドの価値や世界観を発信できるような拠点を作るべきだと考えた」と水上雄一郎アバハウスインターナショナル取締役営業本部長。「代官山という好立地でこういう(ショールーム型の)店舗を運営するのは、坪効率を重視する従来の店づくりの常識から外れている。だがスタッフも『商品を買ってもらうこと』という目的意識から解放されれば、お客さまとの双方向のコミュニケーションが生まれ、ブランドの世界観への共感が生まれる。買うかどうかは、その後に決めてもらえればいい。そんなスタンスが、これからの店舗には必要だ」。
店舗の構想は昨年秋からスタートし、急ピッチでこぎつけた。「僕も正直、まだこの店がどんな形になっていくかは想像がつかない。会社として前例のないことをしているからこそ、若い知見も取り入れながら新しい時代の店舗を作っていきたい」。オープンと同時に公式インスタグラムアカウントを立ち上げ、今後はユーチューブチャンネルやメタバースへの進出なども視野に入れる。これらのタッチポイントを通じ、「スピークフォー」がセレクトするモノ、ヒト、コトなどをさまざまな切り口で発信していく予定だ。