横澤琴葉による「コトハヨコザワ(KOTOHAYOKOZAWA)」が初の単独ファッションショーを5月27日に開催した。2023年春夏の新作とアーカイブ、量産しない一点ものを組み合わせたコレクションを披露した。
このファッションショーを決意した背景には、コロナによって変化する社会への危機感があった。横澤デザイナーは「フィジカルなイベントや交流が減り、ふとしたユーモアや“余白”が消え、よくわからない“正しいこと”ばかりが求められている気がして怖くなった。だから、ファッション・ウイークではないこの時期に、新作でもなんでもないコレクションを盛大に発表して、自分なりに抵抗したかった」と振り返る。
プールサイドで見た等身大の“Y2K”
高校時代のアイテムも詰め込む
テーマは“NOTHING TOOOO MUCH”。「どれだけ詰め込んでも“too much“になることはない。周りを気にせず、やりたいことをやればいい」というメッセージを込めた。
ショーでは、ブランドの新作からアーカイブまでを巧みに組み合わせて、トレンドの“Y2K“スタイルに仕上げた。例えば、細かなプリーツ素材にメロー加工を施し、曲線のカッティングで左右非対称にした“トゥドゥ(TODO)”ラインのトップスには、プラトップを合わせて肌見せし、デニム風にコーティングしたパンツを2枚重ねて下半身にボリュームを出した。サンプルや古着をアップサイクルする1点もの“サムバディ(SOMEDODY)”のボーダーTシャツには、ウエストが垂れ下がるほど大きなデニムを合わせ、腰にベルトを巻きつけてアクセントを加えた。これらのスタイルは横澤デザイナーが学生時代から好きなもので、単にトレンドに乗ったわけではない。
ほかに「高校時代に作った」という顔のイラストを載せた総柄シャツや、着物用のインナー“襦袢”も登場。さらに、タグが付いたままのサングラスや、「メルカリで購入した」という履き潰れたスニーカーなども組み合わせた。価格や品質は関係なく、自分の好きなものを好きなように着る。そんな姿勢が伝わってくる。太めのベルクロとパステルカラーが特徴のスニーカーは、「コンバース(CONVERSE)」とのコラボモデル。ショーで披露したアイテムの一部は、同日のうちにECで販売した。
会場は、東京・東陽町にあるホテル「イースト21東京」の屋外プール。ブールにはきらびやかなバルーンを浮かべ、会場中央には人形の巨大バルーンを膨らませた。ホテルの付近にはチェーン店が並び、ロードサイドのような雰囲気が漂っている。「私は名古屋の郊外で生まれた。会場に来た瞬間、家族で商業施設に遊びに来たような懐かしさを覚えた。そのポジティブな経験をコレクションにも反映したかった」と説明した。