「ザラ(ZARA)」はこのほど、これまで無料としていたオンラインストアの返送料金を、英国で1.95ポンド(約310円)と有料に変更した。日本でも、3月21日から有料となっており、自宅からの返品には490円の手数料がかかるとウェブサイトに記載されている。なお、「ザラ」の店舗や、指定のドロップポイントでの返品は引き続き無料だ。
「ザラ」の今回の変更をめぐってツイッター(TWITTER)では、ヨーロッパ圏を中心に消費者から不満の声が上がっている。返送料金の有料化に対するものに加えて、サイジングに関する指摘が多発した。ツイートの中には、「一貫性のないサイジングが原因」「サイズ感を均一にしてくれれば、そもそも返品しないで済むだろう」「サイジングがめちゃくちゃなので、『ザラ』で洋服を買うときはいくつか買う必要がある」という投稿が見られた。ほかにも、「障害のある人はオンラインでの買い物が必須。それなのに無料で返品ができないのは残念」「返品のために長蛇の列に並ぶくらいなら手数料を払う方がマシ」といった意見がある。
配達サービスを提供するNシフト(NSHIFT)によると、1件の返品手続きにつき、小売業者はおよそ20ポンド(約3100円)の費用を負担しており、オンラインで購入した商品の内、3品に1品は返品されているという。ヨーロッパでは特に、返品することを前提に複数の商品を購入するケースも多い。ある業界関係者は、「返送料金を課すことでより慎重かつサステナブルな購買につながり、包装紙の無駄を減らす意識づけがされていく可能性がある」と語る。
「ユニクロ(UNIQLO)」は2021年3月に返品手続きの条件を変更し、注文間違いやイメージ違い、サイズ違いなど、ブランド側の不備以外の場合の返品の際は、返送料金を購入者負担としている。中国でスタートし、200以上の国・地域でサービスを提供するECブランド「シーイン(SHEIN)」は、初回購入者に限定して返品・交換を無料に。その後は、返品の際の送料は購入者の負担となっている。英アパレルECを運営するエイソス(ASOS)はウェブサイトにて、「返送料は負担しない」と明記しており、送料相当額を返金額から差し引いた金額で返品手続きを行う。
元小売りアナリストで今はコンサルタントとして業界に精通するウォルター・ローブ(Walter Loeb)は、「消費者は送料が無料であることに慣れているが、小売業者の多くはコストカットのため、送料を購入者が負担するべきだと考え始めている。新型コロナウイルスのパンデミックが始まったばかりのころに送料を無料したリテーラーは多いが、今はもうパンデミックも終わりを迎えている。オンラインストアで利益を上げることがより重要になっている」と述べた。米百貨店のノードストローム(NORDSTROM)やメイシーズ(MACY’S)では引き続き返送料を無料にしているが、ローブ=コンサルタントは「オンラインストアの運営にかかるコストをどれだけ抑えられるかがビジネスにとっては重要だ」と説明した。