ミラノ発のラグジュアリーレザーグッズブランド、ヴァレクストラ(VALEXTRA)は普遍的な美しさと高いクラフツマンシップ、現代の生活に寄り添う機能性を兼ね備える名品を生み出してきた。「高品質なものを長く楽しみたい」という消費者が増える中で勢いを増し、2021年のグローバル全体の売り上げは前年比41%増で好調という。21年2月にはストーリーテリングを強みとするグザヴィエ・ルジュー(Xavier Rougeaux)を最高経営責任者(CEO)に迎え、新たなチャプターに向けて動き出した。ルジューCEOに、ビジョンを聞いた。
タイムレスな美学と、
タイムリーな機能性を備える商品
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WWDJAPAN(以下、WWD):ヴァレクストラのDNAとは?
グザヴィエ・ルジュー=ヴァレクストラCEO(以下、ルジューCEO):創業者のジョヴァンニ・フォンタナ(Giovanni Fontana)氏は、建築にも造詣の深いエンジニアだった。私たちの商品は、彼が生み出した洗練された美しさと機能性のバランスの上に成り立っている。例えば、1968年に誕生したアイコンバッグの“トリック トラック”は、戦後ミラノの街が活気に溢れ、外出の機会が増えたことから、ハンズフリーでの移動をかなえるバッグとして生まれた。つまり、タイムレスであると同時に、時代の要請を反映したタイムリーな商品なのだ。私たちはこのDNAを維持するために、現代の生活に沿ったアップデートを加えている。例えば、“トリック トラック”の新作ではアイコニックな形は維持しながら、今のスタイルに合うように取り外し可能なショルダーストラップを付属することによってバリエーションを加えた。
WWD:昨年はアイコンバッグ“イジィデ”のマイクロサイズも登場した。
ルジューCEO:最近は出掛ける際にたくさんの物を持ち歩かなくなった。“マイクロ イジィデ”は、スマートフォンやリップスティック、ICカードなど現代の必需品を再考した結果生まれた。レガシーのあるブランドだからといって、過去にとらわれてはいけない。常に顧客のライフスタイルの変化を注視し、“現在進行形”であることが大切だ。
エモーションを掻き立てる
ストーリーテリングに注力
WWD:CEOに就任して以来、注力していることは?
ルジューCEO:この歴史あるブランドの新しいチャプターを開くために、私が挑戦したいのはエモーションと、欲求を喚起させる仕掛けを加えることだ。基盤となるのは、ブランドのストーリーだ。私はトップに就任してから、「ヴァレクストラ」の85年以上の歴史を振り返り、創業者ジョヴァンニの哲学を理解することに努めてきた。そしてそれを世界各国のチームと共有するために、“ソウルブック”と呼ぶブランドのエッセンスをまとめた冊子を作り、各チームの言語に翻訳した。私たちのようなラグジュアリーブランドは、世界各国の店舗、あるいはデジタル上でも統一感を持った発信をすることが大事だ。顧客がどのチャネルでも自然にブランドのストーリーに浸れるように、チーム全体がブランドの“言語”を共有することが武器になる。
WWD:ストーリーを伝えるための具体的な施策は?
ルジューCEO:ECやSNSを含むデジタルプラットフォームを発信拠点にする。公式サイトでは、定番商品の歴史を伝えたり、ミラノに住む人々のインタビューを掲載したりする読み物コンテンツを始動し、「ヴァレクストラ」な的ライフスタイルを伝えている。また、広告イメージでは、商品をモデルに着用してもらうことも大切だ。なぜなら、商品の細部に込めた機能性やこだわりは、人が着用して初めて意味をなすからだ。動画によるアプローチも有効だろう。インフルエンサーやオピニオンリーダーとの連携を強化し、ブランドの経験を代弁してもらいたい。先日打ち出した母の日に合わせたキャンペーンでは、子どもが作ったアート作品のように見えるオブジェを飾ったギャラリーで商品を撮影した。これが「ヴァレクストラ」流の愛情というエモーションを掻き立てる提案を表現した形だった。ブランドの新しいチャプターに向けて、失敗を恐れず挑戦を続けたい。
コロナ禍で刻印サービスや
リペアサービスを強化
WWD:21年の売り上げは前年比41%増と好調だ。その理由は?
ルジューCEO:ブランド力の強さと美しい商品に加えて、“言語”を共有する各国のチームのおかげだ。情熱的でそれぞれがリーダーシップを発揮してくれるチームを持てば、ブランドの発信力は強まる一方だ。また、コロナの経験は、変化に迅速に対応する重要性を教えてくれた。日本チームは、コロナ禍で刻印サービスやリペアサービスを強化して顧客とのエンゲージメントを高めたり、上顧客向けのイベントを開催したり、顧客の気持ちをくみ取った施策をにいち早く着手した。売り上げとして結果に出ている。
WWD:今後の展望は?
ルジューCEO:商品面では、より多くの人に手にとってもらえるようエントリープライスを20万円前後に広げる。もともと私たちの顧客は、良いものを長く大切にするマインドセットを持っているが、そんな価値観の人たちが世界的に増えている。さまざまな人に、ブランドのジャーニーを楽しんでもらいたい。ストーリーテリングの中心地はデジタルだ。それに伴って、デジタル上での経験を豊かにしてEC比率を上げる。最後に、新たなストアコンセプトで統一された新店を年内に国内にオープンする予定だ。より多くの人に「ヴァレクストラ」の世界観に触れて、喜びを感じてもらいたい。
2022年-23年秋冬コレクションは
「感性的な幾何学」がテーマ
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2022年-23年秋冬コレクションは、「感性的な幾何学(Sensorial Geometry)」をテーマに、洗練された機能美やシグネチャーレザーに焦点を当てた。スクエア型の新作ハンドバッグ“ノーロ クロスボディ”は、2つに仕切られた内ポケットやクロスボディ用のストラップなどの機能性を備え、フロントの金具のVカット、1950年代のアーカイブから着想を得たツイストロックが特徴だ。熟練の技術による黒くつややかなインクで仕上げられたエッジ(コスタ)が美しさを引き立てている。サイズは大・小2種類用意した。また、既存のアイテムをウールフェルトで刷新した新型や、マルチカラーが特徴の“マイクロ イジィデ ポルカドット”など、クラフツマンシップを駆使した“イジィデ”も数々登場する。
ヴァレクストラ ジャパン
03-5615-2379