ファッション

初体験!コロンビアのファッション・ウイークに驚きの連続 地球の裏側で目撃したファッションと異文化

 コロンビアの首都ボゴタで5月19〜22日に開催されたボゴタ・ファッション・ウイーク(Bogota Fashion Week)に参加してきました。コロンビアに渡航するのも、南米のファッション・ウイークに参加するのも今回が初めて。ボゴタ・ファッション・ウイークはコロンビアを含む南米のファッション産業の発展が目的で、非営利団体のボゴタ商工会議所(Chamber of Commerce of Bogota)が2016年に立ち上げた一般参加可能なイベントです。

 街の中心地にある会場に約100ブランドが出展する合同展示会を設け、そこでトークイベントやショーも開きました。4日間の会期中は、午前中から午後5時まで合同展示会を周り、午後5時から9時まで1時間刻みでショーを開催するというスケジュール。メインは合同展示会で、ショーはおまけといった印象です。メディア露出よりも商取引が主な目的のため、今回招待されたインターナショナルゲストはフランスのプランタン百貨店(Printemps)と、コンセプトストアのトム・グレイハウンド・パリ(Tom Greyhound Paris)のバイヤー、ニューヨークが拠点のディストリビューターなど20名程度でした。

現地では「派手であればあるほど」人気

 合同展示会場とショー、現地のコンセプトストアで見かけたコロンビア発のウィメンズブランドは、鮮やかな色彩のカクテルドレスが大半を占めていました。バルーンスリーブやフリルを使った、ボリュームたっぷりのガーリーなドレスが南米市場では支持を集めているようです。ボゴタで最も人気のある、ハイエンドなブランドを扱うコンセプトストアのセイント・ドム(St.Dom)のオーナーに話を聞くと、「色もデザインも、派手であればあるほど好まれる」とのこと。コロンビアを代表するブランドとして現地の方が名前を挙げたのも、「カルロ カリゾーサ(CARLO CARRIZOSA)」というカクテルドレスが軸のブランドでした。一方でメンズは、ゆるっと仕立てたパジャマ風のセットアップや、刺しゅうを施したシャツ、シンプルなテーラードジャケットを多く見かけました。ウィメンズに比べるとまだまだ未開拓な市場の印象。

 また、他都市の合同展示会に比べて、ジュエリーブランドが豊富でした。南米は世界の金産出国と産金量で上位にランキングしているだけあり、現地で見たジュエリーはゴールドばかり!市内にある黄金博物館に行くと、紀元前1000年から金細工が作られており、その後の南米全体の発展にも金属資源が重要だったことを学びました。紀元前後に古代部族が装飾品として着用していたのは神霊のモチーフで、現在は植物や虫など生き物をかたどったデザインが多く、立体的な造形美という原型は変わっていないのが面白かったです。

 バッグも同様で、博物館に飾られた600年前のバッグと、各ブランドやマーケットで見た手織りのバッグがそっくりだったんです。商品としては荒削りでまだまだ発展途上でしたが、手織りや刺しゅう、造形など手仕事系が優れているなと感じました。ここで紹介したいのは、コロンビアの伝統を現代的に解釈し、野生の綿、リュウゼツランの葉、ラフィアなどの自然素材を使ったバッグブランド「バレン(BALLEN)」です。コロンビア産のナッパレザーも上質で、価格帯が日本円で約3万円〜というのも高評価のポイント。ボゴタでショッピングといえば、ファッションブランドの店が立ち並ぶ、全長約50メートルのファッションストリートと大型ショッピングモールか、週末のみ開催するフリーマーケットという選択肢があります。ただし、ここで紹介できそうなクオリティーのショップはセイント・ドムだけでした。

カラフルな街並みと服装の親和性

 市内は、建物とストリートアートがとてもカラフル。レストランに行けば色彩豊かな南国フルーツがたくさん並んでおり、色鮮やかなドレスをまといたくなる気持ちにも納得です。物価は低く、高級レストランのランチで2000円程度で、スーパーで販売している12個入りの卵が1円以下の30銭、タクシーに1時間乗って1000円ほどでした。食文化は豊かで、コロンビアの国民食であり私たちにもなじみがあるのは、魚介類をマリネしたセビッチェやスーパーフードとして知られるキヌアを使った和え物など。肉類もバリエーション豊かで、ミンチを生地で包んで揚げたり焼いたりしたコロッケのような料理をいただきました。そして、コーヒー生産地として有名なだけあり、芳醇な甘みとやわらかな口当たりのコーヒーがとにかくおいしかったのが思い出深いです。想像以上に食文化が豊かで興味をそそられましたが、滞在中は腹痛がずっと続いてたくさんは食べられませんでした……。謎の腹痛の原因は、おそらく飲用には適していない水道水のようです。全く飲んではいなかったものの、ホテルの朝食で食べるフルーツや生野菜を洗うためのほんの少しの水滴で、腹痛を起こしたのだろうと言われました。

 水事情だけなく、国ならではのルールにもカルチャーショックを受けました。例えば、配管が狭くトイレットペーパーが流れないことから、使用済みのトイレットペーパーは便器の脇にあるゴミ箱に捨てなければいけないなど。アルファルトの道路は穴があり、ガタガタなのが現地では当たり前のようです。そして何より注意しなければならなかったのは、犯罪です。スリやひったくりといった軽犯罪だけでなく、誘拐や麻薬密売の重犯罪が多発する地域なのだとか。「指輪を着けていたら、手ごと切られて盗まれるのよ」と教えてくれた現地の方の表情は、冗談ではなさそうでした。滞在していたホテルのエントランスには爆弾を見つける警察犬がいて、入ってくる全ての車の中をチェックしています。各部屋のベッドメーキーングを断れないのは、爆弾と麻薬を確認することも兼ねているためというのにも驚きました。空港のセキュリティチェックでは、内臓に麻薬を隠していないか、X線検査がランダムで行われるほどでした。

 国もファッションも発展途上ではあるものの、伝統を大切にする文化レベルは高く、将来性を感じました。競合他社との差別化を図りたい小売店は、ファッション市場ではまだまだ未開拓の南米ブランドに目を向けると、今後大きく成長するかもしれません。私もこれを機に、コロンビアのファッションシーンに注目していきます。

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