ファッション

藤原ヒロシが語る「シュタイフ」コラボの舞台裏

 藤原ヒロシの「フラグメント デザイン(FRAGMENT DESIGN以下、フラグメント)」と1880年創業のドイツ発ぬいぐるみブランド「シュタイフ(STEIFF)」は、コラボレーション第4弾を発表した。欧州で出産祝いとして渡されるテディベア“マイファースト シュタイフ”を「フラグメント」らしく真っ黒にアレンジ。これを“マイファースト フラグメント”(9900円税込、サイズ26cm)と名付け、1000体限定で販売する。さらに今回は、親子でそろって着られるように、ベビー&キッズと大人向けのアパレルも用意。テディベアのグラフィックから色使い、アルファベットの使い方に至るまで、藤原らしいアイデアを散りばめている。4回目のコラボについて、藤原に根掘り葉掘り聞いた。

 なお、アイテムは6月22日から伊勢丹新宿店と阪急うめだ本店で先行発売し、25日から「シュタイフ」の青山店と公式オンラインショップほか、正規取扱店で販売する。

――ヒロシさんが思うシュタイフの魅力は?

藤原ヒロシ(以下、藤原):テディベアといえば「シュタイフ」。僕の中ではそれしかなかったですね。コラボする前は、「古いテディベアがいくらになった」とかのニュースをたまに見るぐらいだったんだけど、調べたらゴジラからピカチュウまで、いろんなものを「シュタイフ」が作っているんですよ。だから“しっかりしたぬいぐるみ”といえば「シュタイフ」かな。キルティングバッグ=シャネルというのと一緒ですね。

――確かに、古いテディベアに希少価値があるのは、それだけデザインや技術が高いということだと思うが、ヒロシさん自身はビンテージの価値を意識する?

藤原:ビンテージの価値を分かっていない方が多いかな。「それ着ちゃうの?」って言われるし。時計でもデニムでもビンテージはみんなすごく大切に扱うけど、僕は欲しいものを買って、それがたまたまビンテージだったから着るというか。そういうタイプだから本当の意味でのビンテージの良さは分かっていないと思います。ビンテージも新しいものも同じ目線で、良いか悪いかだけですね。

――なるほど。今回、子ども服をデザインするにあたってこだわった部分は?

藤原:子ども服だからといって子ども服に寄せるわけではないんですよね。よく言われるんですけど、子どもと話すときも大人に接するときと同じようにできる限り対等に話すから。だから洋服のデザインも僕の中ではそんなに意識してなくて。いつも通り作ったものを専門家が子ども服サイズに落とし込んでくれました。わりと分かりやすく。

――分かりやすさは大事?

藤原:分かりやすさを求められることが多いかもね。それを汲み取りながらだけど、ブランドによっても違う。「シュタイフ」だったら「フラグメント」を知らない人もいるだろうから、そういうマーケットだったら分かりやすくても逆に面白いかな。

――ヒロシさんといえば黒のイメージがあるが、今回はブルーやピンクも使っている。

藤原:タイミングによって変わるんだけど、ブルーとピンクは、その頃使っていた色なんです。定期的に使う色ではあるんだけど。でも黒は一般的には子どもに着せたくないと思うんでしょうね。だから世の中に少ないんだろうけど。ひねくれた家族に着てもらえばいいんじゃないかなと(笑)。

――バックプリントの“steiff”の“s”を小文字にしたのは、140年以上続くブランド史上、ヒロシさんが初めてだ。本国のドイツでも驚きだったと。

藤原:何も考えてなかったんだけど、先に言われていたら大文字に直していたかも知れないなぁ。僕のイメージだけど、小文字の方が優しい感じがするんですよね。だからメールとかでも、「Mr.Hiroshi」と大文字+小文字で来るより、全部小文字の方が友達っぽいなと自分では感じるかも。

――では、今回の「シュタイフ」もその優しい感じを表現したかった?

藤原:そうだね。なんとなく小文字の方が柔らかいかなと。なぜそうなのか本当の意味は分からないけれど、小文字の方が丸っこいところが多いよね。だから小文字を使うことが多いです。

――MA-1の袖の切り替えは、「グッドイナフ(GOOD ENOUGH)」でも使っていたディテールだ。そもそも、このディテールを思いついた経緯は?

藤原:これね。マット・ヘンズリー(Matt Hensley)というスケーターがやっていたんですよ。それを昔、写真で見て。切り替えしてあったのか、貼り付けていただけだったのか分からないんだけど、ここだけ違うフットボールマフラーみたいなのを付けていて。それを真似してやってみて、それ以来ですね。

――今回が第4弾だが、これまでの反響はヒロシさんの耳にも入っている?

藤原:いや、ないですね。褒めてもらいたいのに褒められない。あれすごい良かったとか誰からもない(笑)。

――毎回、完売していると聞いている。ところで、「フラグメント」としてコラボするときに大事にしていることは?

藤原:まずはやるかやらないかの時点でかなりふるいにかけるので、やるってことは「フラグメント」っぽいものが出来上がるってことだと思う。これは「フラグメント」っぽくないなとか「フラグメント」がやってもあんまり意味がないなってものは全部お断りするんですよ。

――「フラグメント」っぽくないものとは?

藤原:具体的に何?って言われても難しいけど、そのときのタイミングにもよるかな。

――ヒロシさんが1からデザインする場合もあれば、完成しているものだからという理由でロゴを載せるだけの場合もある。それはどう見極めている?

藤原:でも世の中のほとんどのものは完成しているから、グラフィックを載せるパターンが多いね。Tシャツも完成されたデザインだし、子ども用に一から袖をどうこうしようとかも最近はあんまりないから、世の中のいろんなプロダクトがほとんど完成形なのかもしれない。

――過去の「シュタイフ」にはぬいぐるみのお腹を裂いたラグもあった。

藤原:でもぬいぐるみ自体は元々あるものだし、そのぬいぐるみのお腹を裂くのをよく許してくれたな、とは思います(笑)。ありものだけど、誰も思いつかなかったこととかこんなものがあったらいいのになとか、そういうことが好きですね。だからルール以上のことや、やりすぎなことはあんまり好きじゃない。オーバーデザインのものは世の中にいっぱいあるじゃん。それが世の中ではやることももちろんあるんだけど。あるデザイナーにとってみれば、(今回の)Tシャツに毛皮を貼ろうとか、アップリケにしようとか考える人がいるのかもしれないけれど、僕はそれがオーバー過ぎるなと思ったりします。自分の中のちょうどいい塩梅があるんですよね。

――Tシャツに使った熊のグラフィックに「シュタイフ」の耳タグ(黄タグ)が付いていない。耳タグがないグラフィックも「シュタイフ」では初めてだそう。

藤原:そうそう。ここに耳タグがあると土産物みたいで興醒めするなと思ったので。もし耳タグを付けるデザインにしないといけないなら違うデザインにしましょうとは言いました。そこはこだわったと言ったら大袈裟だけど、アレンジしすぎちゃうと商業っぽくなりすぎる気がするんですよね。

――なるほど。今後デザインしてみたいものは?

藤原:自分からはあまりないかな。声をかけられたら考えるというか。デザインのことをやっていて自分では「これ最高だ」と思っても、そういうものこそあんまり人に言わないでひっそりやりたいタイプなんです。

――では、僕らがまだ目にしていない名作があると。

藤原:はい、自分の中にはあります。あとで誰かに発掘されたらうれしいなみたいな。

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