毎週発行している「WWDJAPAN」は、ファッション&ビューティの潮流やムーブメントの分析、ニュースの深堀りなどを通じて、業界の面白さ・奥深さを提供しています。巻頭特集では特に注目のキーワードやカテゴリー、市場をテーマに、業界活性化を図るべく熱いメッセージを発信。ここでは、そんな特集を担当記者がざっくばらんに振り返ります。(この記事は「WWDJAPAN」2022年6月6日号からの抜粋です)
小田島:メタバース参入を狙う企業が非常に多いので、先行企業に「実際どうなの?」と聞くというのが今回の特集の趣旨でした。取材相手が皆、「モノを売ろうと思って参入しても思うようにはいかない」と話していたのが印象的でしたね。“体験”ができる場の提供やユーザーとのコミュニケーションがメタバースでは大事なようです。
平川:バーチャルの世界には、リアルな世界の法律をそのまま当てはめることができません。リアルの世界で守られている商標権や意匠権は、デジタル上では必ずしも守られるわけではないんです。状況が整理されていないので、法律家の間でも現状は意見が分かれることが多いし、判例も少ない。メタバースはまだまだ机上のもので、発展途上だと強く感じました。
小田島:まさに“ワイルドフロンティア”です。参入している人も手探り状態。でも一つ言えるのは、みんなすごく楽しそうなんです。好きじゃないと続かないから、必然的に熱意がある。彼らがひたすら開拓を続けた先に、ビジネスとして大きな実りが待っていると期待します。実際にメタバースを体験したことがあるかないかで大きな差があるので、先行者の優位性は現時点で結構大きくなっているはず。
平川:個人的には、以前「クリスチャン ルブタン(CHRISTIAN LOUBOUTIN)」がゼペット(ZEPETO)で開いていたバーチャル展示会に参加したことがあります。一通り楽しみましたが、ゲームが得意な人の方が向いているのかなと思いました。パソコンの性能など、ハード面の問題もハードルになりそうです。
小田島:スマホで体験できるものも多いので、実はそんなに高いハードルではないんですよ。うちの娘たちの世代は、バーチャルの世界で遊ぶのが当たり前。これで遊んで育った人たちの生活は、もうメタバースの延長線上にしかないのでは。
平川:法制度がしっかり整えば、メタバース上のビジネスも活発になりそうですが、他方で法規制や規範が整わないとビジネスの一歩を踏み出しにくく、ニワトリとタマゴのようなジレンマを感じます。
小田島:まさにワイルドフロンティア。
平川:人類には、深海、宇宙だけでなく、メタバースというフロンティアも残されていたということですね。