美容業界は最新のトレンドや最先端美容テクノロジーを扱う一方で、電話やFAXのやりとりなどアナログなコミュニケーションが多かった。そんな“人”に依存した状態にイノベーションを起こしたいと美容専門PR会社のメディア・グローブは昨年1月、化粧品ブランドとプレスをつなぐ美容PR業務支援プラットフォーム「ビューティプレスボード(以下、BPB)」をスタートした。これまで数度にわたりアップデートを重ね、ブランドとプレスの業務効率化にも貢献。登録ブランド数250、登録プレス数850人、貸し出しアイテム数は約2万点と成長を続けている。開発メンバーの1人である同社PRプラットフォーム部ビューティプレスボードグループの蘆田成美プロデューサーに、美容業界が持つ課題やBPB開発のきっかけ、目指す位置付けについて話を聞いた。
きっかけはデジタル化とは
ほど遠いPR業務を目にして
WWD:BPB開発の経緯は?
蘆田成美メディア・グローブPRプラットフォーム部ビューティプレスボードプロデューサー(以下、蘆田):日々のPR業務でさまざまなブランドと話をする中で感じた業務課題がきっかけです。美容業界は電話やメールでの連絡が多く、貸し出し製品の管理など業務ボリュームが大きいためブランドのPR業務が煩雑になっていました。特に近年はコロナ禍のため対面する機会が減り、若手PRやプレスからは「どこでつながればいいか分からない」といった声もあり、つながり方やつながった後のコミュニケーションにも課題がありました。デジタル化を進めることでこれまでの煩雑な業務を効率化し、PRが本来時間をかけなければいけない業務に専念できれば、そしてプレスとのコミュニケーションを深める新しいつながりの場が作れたらと思いプラットフォームサービスとして開発しました。
WWD:BPBローンチ後のプレスやブランドからの反響は?
蘆田:まだまだ課題が多いですが、徐々にブランドもプレスも利用が増えています。BPBは2019年に構想し1年の開発期間を経て昨年1月にテストローンチ。昨年4月には本格的にサービスが始動しました。プレスからも企画単位で一括依頼できる点が喜ばれています。プレスはこれまでは一つの企画を進行する際、各ブランド宛てにそれぞれの貸し出し依頼製品を記載した企画書を送らなければいけませんでした。BPBでは複数ブランドにまとめて1回で依頼できます。BPBの製品貸出件数はこれまでに1万件を突破し、取り扱いブランド数とともに日々右肩上がりで増えています。最初はプレスもブランドも新しいツールにチャレンジすることにちゅうちょし、「今までのやり方を変えないといけない」「電話の方が早く、システムを覚えるのはフラストレーション」といった理由で利用を断られることも多かったです。
WWD:新しいツールを使ってもらうために行ったことは?
蘆田:どうしたら利用してもらえるのかを考えたとき、最優先したのは「プレスの利便性」でした。当初から情報収集とブランドへの貸し出し依頼が一括でできるという“目指すプラットフォームの形”はありましたが、業務の効率化に至るまでの操作性が追い付いていませんでした。そこでプレスから実業務で利用する上で不便に感じる点を聞き取り、ローンチ後も機能のアップデートを集中的に行いました。プレスのリアルな意見にスピーディーに対応することで少しずつ満足度が向上し、ブランドからは「これまでつながりのなかったメディアから貸し出し依頼が来た」という声もいただくようになりました。
ビューティプレスボードとは?
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WWD:コロナ禍で変化するプレスの需要にも柔軟に対応している。
蘆田:コロナ禍では人との接触を避けるため製品撮影ができず、その分画像依頼が依頼全体の2〜3割程度に増えました。しかし当初はBPB内で画像依頼をしても、ブランドから直接メールで画像が届くというシステムでした。結局はBPBから出たやりとりが必須だったのですが、昨年秋のアップデートではBPB内で画像の貸し出しが完結できるように改良しました。
WWD:現在の登録数は?
蘆田:登録プレス数は850人で、メディアの編集者やフリーランスライターに加え、最近ではSNSで美容コンテンツを発信しているインフルエンサーも増えています。登録ブランド数は250で貸し出しできるアイテム数は約2万点。百貨店で扱うラグジュアリーブランドから“プチプラ”ブランドまで網羅していますが、さらにブランドのカテゴリーを広げ、プレスが企画の立案や貸し出し依頼をBPBで完結できるようなブランド数を目指したいですね。実際にプレスからの「BPBで全ての化粧品ブランドに依頼できるようになってほしい」という声は非常に多く、期待に応えられるようブランドへの利用促進を図ってまいります。特に「何からPRを始めればいいか分からない」というブランドには、PRを始める第一歩としてBPBへの登録を勧めたいです。
WWD:BPBが目指すものは?
蘆田:美容業界における“標準ツール”を目指しています。プレスが貸し出し依頼や新製品情報の収集をするとき、「まずはBPBをチェックしよう」となる当たり前の存在になりたい。時短や効率化がかない便利になるだけでなく、BPBだから知ることができた情報やつながれたプレスとブランドがあるという、プラスアルファの価値をつくりたいです。機能面では、プラットフォームの特性を生かして貸し出しデータを可視化し、トレンドやニーズの分析などを提供していきたいと考えています。今後も業界のPR業務に役立つために、日々プレスやブランドの声を吸い上げて機能面とサポート面の改善を続けていきます。
BPBを利用するブランドと
プレスが語るメリットとは?
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TEXT:WAKANA NAKADE