ファッション

人気ディレクター榎本実穂によるメディカルウエア 老舗ユニホームメーカーと組み女性支援の新ライン

 老舗ユニホームメーカーのチトセは、同社のメディカルウエアブランド「ユナイト(UNITE)」のハイポジションラインとして今春、「ユナイト ディヴィジョン オブ エムイー(UNITE DIVISION OF ME)」をスタートした。ディレクションを手掛けるのは、セレクトショップのバイヤーなどを経て、現在「リヴィントーン(LIVINGTONE)」や「ミオズモーキー(MIOSMOKEY)」のクリエイティブ・ディレクターとして活躍する榎本実穂だ。

 機能性に特化した従来のユニホームに対して、袖を通した時の“高揚感”まで大切にした新たなユニホームで、医療やエステサロンの現場では少ない「(ウエアの)選べる自由」を提案する。メディカルウエアの機能性とファッション視点の立体的なパターンの美しさを兼ね備えたアイテムは、普段使いすることも可能。医療現場では消耗品のため、約8000円~1万6000円という価格帯にもこだわった。

白衣の機能性×ファッション視点のデザイン性

 第1弾のラインアップは、比翼仕立てにすることでシャープな印象に仕上げたノーカラーのドクターコート(1万5180円=税込)、ウエストを程よく絞ったファスナー式のスクラブ(医療用白衣・9570円)、セーラーカラーのトップス(9790円)、センターにクリースステッチを施したパンツ(8580円)などの全10型。SS~3Lの各6サイズで展開する。

 色味は、クリームやヌードピンク、ダークネイビーなどのニュアンスカラーで統一し、周囲に威圧感を与えない、上品でクリーンなカラーにこだわった。素材はチトセの知見を活かし、伸縮性と制電性のある“ダブルクロスライト”、制菌と透け防止、UVカット機能を兼ね備える“軽量ストレッチツイル”、ドライな肌触りで制菌性のある“ソフトトロピカル”など、既存の3種類を採用した。

 そもそもディレクションを引き受けた経緯について、榎本ディレクターは「疲弊している医療従事者の方、特に女性を応援できるプロジェクトだったため」と話す。「オファーをもらった2020年は、自分自身も独立したタイミング。コロナによる未曾有の事態の最中で、このままファッションを続けていいのか?と思い悩んでいた時期でもあったが、これなら“ファッションしかできない”自分が、社会のために何か出来るのでは?と思えた」と続ける。

“気分の上がる”制服で女性を支援

 製作にあたり事前に医療現場で入念なヒアリングをしたというが、「既存のユニホームに対して『もっと、こうだったらいいのに!』という声が意外にも少なかった。選べる権利はないので何か思ったこともなかった、という“諦め”のような印象。でも多くの人と関わる現場なので、言葉にせずともきれいに見られるのは嬉しいはず。ユニホームを通して、気分を上げてもらう手伝いならできると思った」と振り返る。

 モノ作りにおいては、制電性や制菌性、ストレッチ性、ポケットの位置、洗いやすさなどの制約を守りつつ、過剰なディテールをそぎ落とすことで、スマートなデザインを追求。既存のメディカルウエアは平面的なパターンが多いが、パネルやダーツ使いで、身体のラインに程よく沿う美しいシルエットに仕上げた。

 「ユナイト ディヴィジョン オブ エムイー」の立ち上げに合わせて、同社初のブランド公式サイトやオンラインストア、インスタグラムなどもスタート。カタログ注文だけだった従来の販売方法から、一般的の人も購入できるシステムを作りBtoCの発信も強化する。「展示会で新作をお披露目したり、接客で商品を紹介できたりするのは、実はファッションならでは。ユニホーム業界では、カタログ訴求と代理店販売だけなので、世界観を伝えるのが難しいが、そこから変えていきたい。次は素材から開発するのが目標。女性支援という軸はブレずに、今後はポップアップなどを企画して、より多くの方に手に取ってもらう機会を作っていきたい」。

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