ファッション

「ディオール オム」2016-17年秋冬パリ・メンズ・コレクション

REPORT

優等生クリスの反乱!?クチュリエによるメンズの王道、スーツの破壊

ディオール オム(DIOR HOMME)」のメンズを手掛けるクリス・ヴァン・アッシュ(Kris Van Assche)は、優等生的存在のデザイナーだ。彼の生真面目さは、「ディオール オム」のコレクションに現れ続けている。エディ・スリマン(Hedi Slimane)の後任という重責を担うことになった彼は、「『ディオール オム』の顧客が本当に求めているもの」、そして「『ディオール オム』が提案しなければならないこと」を考え、その答えをスーツに見出した。以降彼は、コレクションの軸をフォーマルウエアから移すことを一切せず、近年はそこに創業者ムッシュー・ディオールへのオマージュまで盛り込み続けている。多少一本調子な気はするが、それもまた、彼の生真面目さによるものだろう。

そんなクリスが今シーズンは、スーツの“破壊”という、優等生らしからぬチャレンジに挑んだ。しかも、“破壊”する際に用いたのは、クチュールブランドならではのクラフトマンシップ。クリスは、職人の手仕事を動員し、美しいスーツを、さらに美しくするのではなく、半ば破壊し、フォーマルウエアに新たな一面を付することにトライした。

代表的なのは、中盤以降頻繁に登場した、深紅の刺しゅうで彩られたフォーマルウエアだ。深紅のステッチはスーツの上に格子柄を描くが、糸はところどころ切れたり、ほつれたりで生真面目なクリスらしからぬ不完全さ。完璧だったスーツは、職人たちの手仕事によって“破壊”され、結果、フォーマルから逸脱することなく、フォーマルとグランジという2つの世界が融合した。この前後のジャストフィットのジャケットと、巨大なバギーパンツのセットアップも、極端なプロポーションバランスを選ぶことでフォーマルの美を“破壊”した結果だ。

反逆精神を、ストリートライクなスタイルで表現するのではなく、あくまでスーツで描くのは、「ディオール オム」らしく、クリスらしい。彼が信じるスーツの可能性は、われわれが思う以上にずっと広いようだ。

LOOK

関連タグの最新記事

最新号紹介

WWDJAPAN Weekly

メンズ32ブランドの猛暑に負けない推しスタイル 2025年春夏メンズ・リアルトレンド

「WWDJAPAN」12月16日号は、2025年春夏シーズンのメンズ・リアルトレンドを特集します。近年は異常な暑さが続いており、今年の夏は観測史上最も暑い夏になりました。ファッション界への影響も大きく、春夏シーズンはいかに清涼感のあるスタイルを提案するかが大切になります。そこで、セレクト各社やアパレルメーカーの展示会取材、アンケートを通して全32ブランドの推しのスタイルを調査し、メンズのリアルな傾…

詳細/購入はこちら

CONNECT WITH US モーニングダイジェスト
最新の業界ニュースを毎朝解説

前日のダイジェスト、読むべき業界ニュースを記者が選定し、解説を添えて毎朝お届けします(月曜〜金曜の平日配信、祝日・年末年始を除く)。 記事のアクセスランキングや週刊誌「WWDJAPAN Weekly」最新号も確認できます。

@icloud.com/@me.com/@mac.com 以外のアドレスでご登録ください。 ご登録いただくと弊社のプライバシーポリシーに同意したことになります。 This site is protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.

メルマガ会員の登録が完了しました。