6月13日発売の「WWDJAPAN」ではファッション&ビューティ業界で活躍する女性25人にスポットライトを当て、彼女たちが考える女性活躍の達成度や課題、個人的に目指すロールモデルについて取材した。1999年に美容総合サイト「アットコスメ(@COSME)」を立ち上げた山田メユミ・アイスタイル取締役が考える、女性活躍推進を阻む問題とは?
WWD:“女性活躍”というワードを聞いたときに、率直にどんな感想を抱くか?
山田メユミ=アイスタイル取締役(以下、山田):化粧品業界に関して言えば、もともと従業員における女性比率が高く女性の活躍なくして存続できないので必然的に環境整備やカルチャーの醸成が進んでいる。少し前までは「とは言え、経営層は男性だよね」という論調が多かったが、上場している大手企業の取締役会にも女性が必ずいるし、各社が取締役会における女性比率30%以上を目指していると宣言を出しており、女性活躍が進んでいる業界と言える。
WWD:ここ数年で加速度的に進んだ。
山田:2019年の「30%クラブジャパン」発足のように、具体的な数値目標が出てきたことが推進力となった。また近年は投資家からの圧力も大きく、国内だけでなく海外機関投資家からの視点も意識して環境を整えなければならない。日本という島国の中で展開してきた議論を開かれたものにしようという流れの中で、女性活躍は当然のものとして求められ、さらにダイバーシティーの観点から外国人比率も一つの指標になりつつある。
WWD:アイスタイルにおける女性活躍の達成度はどうか。
山田:部課長クラスを含めた部門長、いわゆるマネジメント層の女性比率は57%となっている。女性社員比率が76%なので正比例すれば70%を超えなければいけない。女性だからではなく、ジェンダーに関係なく活躍してほしいと思っている。取締役会における30%未達の状況を考えると、まだまだ課題・伸び代はある。
WWD:理想が女性社員比率とマネージメント層における女性比率が同数であることならば、未達の要因は?
山田:当社では出産して復帰する人がほぼ100%だが、体調を崩して離職したり、パートナーの転勤で辞めざるを得なかったり、女性であるが故の退職がゼロにはなっていない。本人の選択なので仕方がない部分もあるが、そこに対してまだやれることがある。コロナ禍でリモートワークが進みどこでも働ける環境が整いつつあるので、仕事を継続したいのに物理的な制約で辞めざるを得ない状況を限りなくゼロにしたい。働く能力に性差はないとはいえ、体調の変化や妊娠適齢期、家庭でのケアワークなど時間に関わる制約が女性の方が多いのは確か。計画的に人生のビジョンを持つのがどうしても難しい側面がある。そこに対して物理的に後押しするため、当社では福利厚生として社内講座を開催している。
WWD:女性向けの福利厚生の内容は?
山田:女医などを招いて女性の体について学ぶ機会を提供している。妊活に関わるテーマや更年期の実態と対処法を専門家に聞いたことも。女性特有の体の悩みや心配事を少しでも緩和して、かつ計画的にライフプランを考えるための機会提供を行なっている。知りたい人が知ることができる機会を提供することが大事だ。女性の生き方をわれわれが固定化して、この枠に当てはまってほしいということではなく、知ることで精神的安定を得て働くことにコミットできることもあるので、昨年から取り組みを始めたところだ。女性の場合、20代で入社して、30代で仕事の責任がだんだんと重くなり、マネージメント層になってやりがいを持って取り組んでいきたい時期に、体の変化や妊活をする人にとっては適齢期が来るなどの悩みがある。情報を知ることで自分の在りたい姿を考えてミスマッチをなくし、ベストの状態で活躍してほしい。とはいえ、押し付けたいわけではないので説明の仕方がとても難しい。
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