現在21歳の大平修蔵は、ファッションモデルなど、いくつものフィールドを股にかけて活躍している。TikTokの一つの投稿をきっかけに世界中から注目を集め、2022年6月8日現在はSNSの総フォロワーを700万以上を抱えている。モデルとしては、「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」の2021年春夏メンズコレクションでランウエイデビューすると、9日に行われた「ディーゼル(DIESEL)」のショーにも起用され、堂々としたウオーキングを披露した。また俳優やDJもこなし、さらに英語が堪能であることから“次世代のグローバルアイコン”として熱い視線を浴びている。大平に、活動の原点や今後の展望について聞いた。
応援団長でなく、副団長を選ぶような人生だった
WWD:どんな子供時代を過ごしましたか?
大平修蔵(以下、大平):両親が航空会社で働いていたので、普段から英語が飛び交う家庭でした。家に遊びに来るのも米軍基地で働いている人の家族や、いろいろなバックグラウンドを持つ人が昔から身近にいましたね。
僕は一つのことに集中し始めたらそれしかできなくなっちゃう子供でした。幼稚園で縄跳び大会があった時は1位にこだわり、母親を付き合わせて泣きながら練習していたらしくて。今もとことん突き詰めるタイプなので、あまり変わっていないですね。
WWD:15歳でニュージーランドに留学。留学先での経験で、特に印象的だったのは?
大平:通っていた学校に日本人は僕一人でした。ほかにも中国、韓国から来たアジア圏の留学生がいたんですが、仲間はずれにされたくなくて、文法も気にせず英語でコミュニケーションを取るようにしたり、スポーツに打ち込んだりしました。そうするとクラスメイトも僕のパーソナルな部分に興味を持ってくれるようになりました。いじめっ子タイプの同級生も最初は好きではありませんでしたが、自分に自信をつけて堂々と話してみると、彼らも同じ人間なんだと分かったんです。どんな人でもフラットに見る大切さは、その時に覚えましたね。
WWD:TikTokを始めたきっかけは?
大平:帰国してから芸能事務所に所属していたものの、以前と特に変わらない生活でした。ある時友達に勧められて、TikTokを何となく始めました。でも、最初は照れがありましたね。もともと目立ちたがり屋だけど、いざ注目されると恥ずかしくて、応援団長じゃなくて副団長を選ぶような人生だったので。
でも、トレンドを真似た最初の投稿が運良くバズったんです。通知が次々に届くから友だちに見せたら「それ、バズってるよ」って教えてくれました。それからTikTokで動画を日々アップするようになったらフォロワーもどんどん増えていき、ブランドのデジタルプロモーションの仕事も依頼されるようになりました。
「デジタルで得たパワーをフィジカルで爆発させたい」
WWD:その後、東京で開催された「ルイ・ヴィトン」の2021年春夏メンズ・コレクションで、ランウエイデビューしました。
大平:デジタルの仕事をしながら初めて受けたオーディションでした。デジタルでの活動はすでに行っていましたが、みんなと同じようにオーディションを受けて選んでもらいました。この「ルイ・ヴィトン」のショーは、自分の人生で大きなターニングポイントになりました。コロナが流行し始め、これからどうするという不安定な時期に、ヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)が手掛けたショーに参加できるなんて、二度とない経験です。本当に幸せな瞬間でしたね。以前は“TikToker”と紹介されるのがあまり好きじゃなかったけれど、このショーを歩いてからはモデルとしての自信がつき、TikTok以外のフィールドで自分の存在価値を少しずつ見出せるようになりました。
WWD:デジタルでの発信に注力していこうと思ったきっかけは?
大平:TikTokを始めて半年ほどでフォロワーが200万を超えた時に、何気なくやっていたことが人のためになっていると気がついたんです。自分にオファーが届いた仕事はメイクやスタイリストなどみんなで一緒にできるし、コメントで「おはよう」「おやすみ」と毎日送ってくれる世界中のファンにとっては、僕が生活の一部になっているのかなと。そう考えるとさらにやる気がでましたね。
WWD:世界中にファンがたくさんいるのはどうしてだと思いますか?
大平:愛が一方通行にならないように、動画を通してファンの方が求めるものをお返しするのは意識しているからでしょうか。最近、6月12日放送の「アナザースカイ」のロケでパリを訪れた時に、街にいたファンが寄ってきてハグをしてくれたんです。その時に、見えないところで応援してくれている人たちと愛を分かち合える喜びを感じ、愛をしっかり受け取ることも大事だと改めて感じました。
WWD:大平さんは活動テーマに“デジタルブリッジ”を掲げています。これはどういう意味ですか?
大平:デジタルを使って、人と人との掛け橋になりたいんです。戦争をやめてほしいとか、差別は嫌だとか、僕の思いに共感してくれる人たちがいろいろな国にいるので、僕を通してその人たちが思いを共有する輪が生まれたらうれしい。でも、それを言葉ではなく、僕自身の活動を通じて、背中を見せて伝えていきたいです。
WWD:今の自分自身の肩書きをあえて一言で表すならば?
大平:写真家のレスリー・キー(Leslie Kee)さんが「修蔵はデジタルアーティストだね」って言ってくれたのが印象に残っています。そういう捉え方があるんだ!って新鮮でした。確かに、デジタル上のクリエイトはもちろん、モデルもDJしています。だから“デジタルアーティスト”という呼び方はしっくりくる気がして、インスタグラムのプロフィールにも書いています。
WWD:今後の目標は?
大平:今年は国境を越えての移動もしやすくなるはずなので、デジタルで得たパワーをフィジカルで爆発させたいです。僕は欲張りなので、ショーのフロントローに座りたいし、モデルとしてランウエイも歩きたい。ドラマで主演もやりたい。DJとしてフェスにも出たい。フィジカルでやるならデジタルと違ってお金も時間もかかるので、一気に全部は無理だと分かっています。でも、一つずつ叶えていきたいですね。漠然としていた自分の夢がリアルに見え始め、今スタートラインに立てた感覚なので。