「クリスチャン ルブタン(CHRISTIAN LOUBOUTIN以下、ルブタン)」が靴底に用いる“赤色”の商標登録を目指している件について、特許庁は「ルブタン」の請求を退け、登録を認めない判断を下した。
「ルブタン」は2015年、アイコニックな“レッドソール”に使用される赤い色を「色彩のみからなる商標」として登録出願するも、19年に登録を拒絶された。「ルブタン」は拒絶査定に対して不服審判を請求したが、特許庁は「色彩としてはありふれたもの」「広く認識されるに至っているとまでは認められない」として、6月7日に「ルブタン」の請求を退けた。
「ルブタン」は、女性用ハイヒールの靴底部分に施した赤色(パントン社の18-1663TP)について、ありふれたものではなく、識別力を獲得していると主張したが、特許庁は赤色について、「ファッション分野において(中略)好んで採択、使用されており、色彩としてはありふれたものである」と判断。また、「靴底の位置を赤色に彩色することは、商品の美感を向上させる目的で取引上普通に採択、使用されているデザイン手法」であり、「商品の色彩には自然発生的な色彩や商品の機能を確保するために必要とされるものもあることから(中略)原則として何人も自由に選択して使用できるものとすべき」と述べている。
識別力の証明として、「ルブタン」は第三者機関によるアンケート調査の結果を提出している。調査は東京都、大阪府および愛知県に住む20~50歳の女性3149人に対して行われ、43.35%が靴底の赤い靴を見せてブランド名を尋ねたところ「ルブタン」と回答したという。しかし、この数値に対して特許庁は日本国内では「広く認識されるに至っているとまでは認められない」と判断している。
さらに、赤い靴底の婦人靴を他のブランドでも販売していることを取り上げ、「排他独占的な使用を認めることは、商品の美感を向上させるために自由に使用が認められていた色彩(赤色)について、第三者による使用を不当に制限する結果にもなるから、公益上の観点から支障がある」と判断した。
「ルブタン」は3月に、赤い靴底の婦人靴を販売するシューズブランド「エイゾー(EIZO)」などを運営するエイゾーコレクションとの裁判で敗訴している。
日本の「色彩のみからなる商標」は、15年の商標法改正で新たに認められた種類の商標で、これまでにセブンイレブンなどが登録を認められており、直近では4月にチキンラーメンのパッケージに用いられる、セピア色、白色、オレンジ色からなる配色が登録を認められた。しかし、登録が認められたのはいずれも複数の色で構成されている点が特徴で、「ルブタン」のレッドソールのような単色での登録を認めたケースはまだ例がないのが現状だ。
「ルブタン」によると、レッドソールは、オーストラリアやカナダ、フランス、EU、ロシア、シンガポール、英国、米国などを含む50カ国で商標登録されているという。