ジェンダー平等を求める声の高まりを受けて、ファッション&ビューティ業界でも業界のあり方や商品・広告の企画、働く人の福祉など、さまざまな観点からジェンダーの構造や意味を問い直す議論が進んでいる。6月13日発売の「WWDJAPAN」ではファッション&ビューティ業界で活躍している女性25人にスポットライトを当て、業界の現状について思うことや女性活躍の推進に注力しているブランドや企業を紹介し、ロールモデルも聞いた。今回特集を組み立てる上で、「話を聞きたい!」と特集チームの頭に真っ先に浮かんだのが水原希子だった。ファッション&ビューティ業界でモデルとして活躍しているのはもちろんのこと、俳優やブランドプロデューサーの顔も持つ。直近では、エンターテインメント業界のジェンダー関連問題についても発言するなど、等身大な発信が共感を集める。ヘルシーな魅力とパワーを魅せる水原に聞いた。
WWDJAPAN(以下、WWD):ファッション業界や映画業界で活動しているが、女性やマイノリティーはどれだけ活躍できていると思う?
水原希子(以下、水原):日本のファッション業界は女性が多く、多様だと思いますが、何か独特な感じもします。映画業界や芸能界はまだ男性が権力を持っていることが多い印象です。すごく政治的で、組織化された空間のように感じます。一方最近出演した映画では、セクシャルなシーンもあったので女性スタッフをメインにチームを組むなどしていて、現場の雰囲気が変わったのを体感しました。
WWD:要因はなんだと思う?
水原:芸能事務所に入っていると、発言が限られる場合もあり、問題が生まれやすい環境ができてしまう気がします。SNSのない時代は、事務所に入っていないとそもそも表に出ることができなかったので、事務所の存在は非常に大きなものだったのではないでしょうか。実際オーディションのためのアドバイスが受けやすかったり、経験について助言もいただけたりすることもあります。
でも、何か問題が起こったときには事務所が守ってくれる反面、SNSやプライベートの自由が制約されたりする側面もあります。事務所がタレントに対して活躍の場に制限をかけてパワーを使うことも可能だし、当事者も「次はないかもしれない」という恐怖を感じやすいので、平等に話せないと感じている人も多いのではないでしょうか。尊敬するクリエイターなどにいろいろと助言されるのは自分のためになるので実践していますが、守ってくれるためとはいえ事務所に自由が制約される可能性があるのも事実です。
WWD:水原さんは2017年から自分で事務所をやっている。自由である分、責任が伴うことも?
水原:もちろんそうです。(タレントのスキャンダルを事務所が謝ったり、揉み消したりすることもありますが)何か失敗をしたときに自分で謝ることは、自分の成長にとって大事なこと。私は恋愛もしたいし、旅もしたい!フレキシブルに働ける環境じゃないと自分らしく生きていけないですよね。その方が表現の幅も増えるし、面白い人生になると思う。自分の気持ちの赴くままに生きることが人間らしいと思うし、それを邪魔されてしまうのは健康的じゃない。いい仕事にもつながらないと思っています。自分の大事なものを引き換えにするような働き方はとても苦しいです。私は幸運なことに今はコミュニケーションしやすい人たちに囲まれて過ごせていて、自分の居場所を見つけられました。モデルという仕事もいつまで続けられるか不安に思いながらも貪欲に生きてきて、SNSで自分のチャンネルから発信ができて共感する人が集まるようになって。時代が変わったなと改めて感じます。
WWD:問題提起するような発信もしているが、原動力は?
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