近年、中国市場においてシャンプー、コンディショナー、ヘアオイル、ヘアマスクなどの高価格帯ヘアケア商材の需要が急拡大している。特に中流階級層やZ世代は、髪の悩みに応えるさまざまなヘアケア商材の購買と手入れに積極的だ。例えばベンチャー・キャピタルで働く女性は、「ヘアケアへの投資は、フェイシャルケア以上。長時間労働のせいか、髪の毛と頭皮は繊細。だから頭皮にストレスを与えず、ボリュームを出すヘアケア商材を求めている」と話す。彼女は毎月250ドル(約4万5000円)をヘアケアに費やす。隔週の頭皮マッサージと、ヘアサロンでのヘアブロウにも投資を惜しまない。
需要の拡大は、市場に大きな利益をもたらしている。中国のプロクター・アンド・ギャンブル(PROCTER & GAMBLE)のヘアケア事業は、他国の事業が1ケタ成長に留まる中、過去10年間で最も大きな成長率を示して2ケタ成長を達成した。中でも「パンテーン(PANTENE)」はコンディショナーやトリートメントをプレミアムに刷新し、インフルエンサーを起用してライブストリーミングを行うなどプロモーションを展開。その結果、スカルプトリートメントや洗い流さないヘアマスクなどの高額品は従来と比べ3〜4倍売れた。
TモールとCBNデータによると、中国のヘアケア市場では「ケラスターゼ(KERASTASE)」や「ロクシタン(L’OCCITANE)」、「ルネフルトレール(RENE FURTERER)」、「モロッカンオイル(MOROCCANOIL)」などが販売する18.20ドル(約2400円)を超える高級シャンプーの需要が高まり、「ヘアレシピ(HAIR RECIPE)」や「リョ(RYO)」「シュワルツコフ(SCHWARZKOPF)」といった中価格帯のブランド群と比較しても急速な成長しているという。機能面では、ボリュームアップ、オイルコントロール、フケ・かゆみ防止に対応する商品が求められ、シリコンフリー、ジンジャー、ココナッツの香りなどがトレンドだ。特に高級コンディショナーの成長ペースは、マスブランドの倍以上。褪色コントロールを筆頭に、パサつき・絡まりを防止する商品が支持されている。
市場調査会社のミンテル(MINTEL)は、中国のヘアケア市場は2025年までに91億6000万ドル(約1兆2300億円)に達すると予測している。同社のアン・イン(Anne Yin)=ビューティ&パーソナル ケア アナリストは、「中国のヘアケア市場は、コンディショナーとトリートメントがけん引している。女性がより多様なヘアケア製品を取り入れ、男女ともにスカルプ製品を購入している。ブランドの新製品開発も盛んで、スキンケアの知見をヘアケアに取り入れている。こうしてヘアケア市場が、ほとんど飽和しているシャンプー市場に代わる成長要因となった」と話す。今後は「成分やテクノロジーに関する関心がますます高まるだろう。パーソナライズにも期待したい」と続ける。
米ヘアケアブランド「オラプレックス(OLAPLEX)」のジュエ・ウォン(Jue Wong)=CEOも、ヘアケア製品のプレミアム化、カスタマイゼーション、頭皮ケアがビジネスチャンスと分析する。同ブランドの21年の売り上げは前年比2倍となる5億9840万ドル(約807億円)を記録し、22年には7億9600万ドル(約1074億円)から8億2600万ドル(約1115億円)まで拡大すると見込んでいる。ウォンCEOは、770億ドル(約10兆3950億円)規模といわれるグローバル・プレステージ・ヘアケア市場の10%以上を占める中国を注力市場に掲げている。同国の若年層にリーチするため、大手ECサイトのジンドン(京東商城)とパートナーシップを締結し、eコマースを強化。昨年10月には男性アイドルグループイントゥーワン(INTO1)のダニエル・チョウ(Zhou Daniel)をブランドの初のアンバサダーに起用している。