「ユニクロ(UNIQLO)」2022-23年秋冬物の値上げが、ファッション業界内外で大きな話題となっています。これは「ユニクロ」に限った話ではありませんが、通常ファッションブランドが値上げを行う際は、アイテム1点1点の付加価値や商品構成全体を見直し、客離れを最小限に食い止めるよう工夫を凝らすものです。「ユニクロ」22-23年秋冬展示会も、客を離さないための工夫や戦略、努力に溢れていたのでそれらをご紹介します。
22-23年秋冬の「ユニクロ」展示会では、アウターバリエーションを拡大していることが商品戦略上のニュースでした。特に、今まで「ユニクロ」でイメージの薄かった中綿アウターを大幅に増やしている点がポイントです。値上げする商品の筆頭としてウルトラライトダウンの名前が報道で上がっていますが(5990円から6990円に変更)、中綿アウターはダウンと雰囲気は似ていながら、ダウンより価格を抑えて作ることが可能。中綿アウターを増やすことで、原料高や物流費高騰の圧力の中でもプライスポイント(最多価格帯)を保とうとしているんだと思います。
ダウンに代わる本命は「ヒートテック中綿」
メンズでは、吸湿発熱機能の中綿を使ったブルゾンを「ヒートテック中綿」として打ち出していました。価格は5990円と、ウルトラライトダウンの値上げ前の価格とぴったり同じ。ウィメンズには「ヒートテック中綿」はありませんでしたが、より柔らかい質感に仕上げたダイヤ柄キルティングの中綿ブルゾン(4990円)や中綿ベストなどを企画していました。
アウターバリエーション拡大の中で、ボアフリースのロングコートやブルゾンも多数そろえていました。防風機能を持たせたモデルも多く、アウターとしての使い勝手の良さをより一層アピールしています。フリースでは毛足の長いファーリーフリースのブルゾンなどの値上げが発表されていますが(1990円から2990円に変更)、そうは言ってもダウンなどに比べるとフリースはもともと価格が安い。ウィメンズのマネキンに着せていたフリースも2990円と、アウターとして考えれば非常に買いやすいと感じました。
ダウン以外のアウターへのフォーカスばかりが目立ちますが、ダウンで何もしていないわけではありません。むしろ、ウルトラライトダウンは1点1点の付加価値を上げて「これならほしい」と思わせる工夫を詰め込んでいます。筆頭は、ウィメンズで企画している新顔のロングベスト(6990円)です。ダウンのロングベストは、21年秋に「セオリー(THEORY)」と「ユニクロ」のコラボ商品として企画してヒットした実績があります。今季は満を持して、通常ラインのウルトラライトダウンのシリーズの中で登場します。今春夏のウィメンズのリアルクローズ市場でもロングベストは大ヒット中。「ダウンのロングベストもほしい」という声は期待ができそうです。
ウルトラライトダウンの新顔もう1点は、表地に光沢感のある生地を使い、ダウンも豊富に使ってよりボリューム感のあるシルエットに仕上げたブルゾン(8990円)。今っぽいシルエットなので、旬のY2Kファッションなどとの相性も良さそうです。
アウターのバリエーション強化の中では、ほかにMA-1ブルゾンやスタジアムジャンパー、ウールのダッフルコート、ダブルフェースのガウンコートなども企画しています。
ミニスカートがいよいよマスヒットの予感
さて、アウター以外では、ニットとパンツも22-23年秋冬の強化アイテムに据えていました。ニットでは、カシミヤ100%のウィメンズセーターを8990円から9990円に値上げすると発表しています。その分、ホールガーメント編み機による3Dニットにすることで着心地をより良くし、商品価値を高めています。これまで「ユニクロ」には少なかったローゲージニットの型数を増やして、選ぶ楽しさを提供している点もニット強化上のポイントなんだと思います。フェアアイル柄のセーター(ウィメンズ2990円)、ケーブル編みのセーター(ウィメンズ2990円)などがあり、新鮮に映ります。
パンツは、今春夏売れているジーンズで、22-23年秋冬はバギーシルエット(3990円)を推しています。また、ワークパンツやチノパンなども、全体的にワイドシルエット推し。通勤にも対応できるウィメンズのきれいめパンツなども、タック入りでやや太めに仕上げていました。ウィメンズでは、いよいよマスヒットが期待される台形シルエットのミニスカート(2990円)も1型企画しています。この価格なら挑戦もしやすいですよね。