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大学生も中核を担い「ティティーアンドコー」刷新 社長は「自分はもう監督兼4番バッターじゃいられない」

 ガールズマーケットの一翼を担っていた「ティティーアンドコー(TITTY&CO.)」が、大卒1年目の超若手も中核として活躍する新チームで刷新を進めている。ガールズマーケットの衰退で、「良くも悪くも優等生で、『どこがいいの?』と聞かれたら『やりすぎていないこと』だった」(ブランドを手掛ける高田憲男ディーアンドエー社長)という「ティティーアンドコー」も停滞、コロナが追い討ちをかけた。同社は20あった直営店を3つにまで絞り、ZOZOを皮切りにECにシフト。同時にディレクターに起用したインフルエンサーのPOYOは、昨秋以降入社したメンバーと共に2月、リブランディングを象徴する2022年春夏コレクションを発表。顧客やファンを招いた受注会にも初挑戦し、3月末には公式サイトもリニューアルした。「WWDJAPAN」推定でピーク時の半分の10億円弱まで落ち込んだ年商も回復の兆しにあり、直営のビジネスも「かつての7、8割まで戻ってきた」という。若手にブランドの未来を託した高田社長、そのバトンを受け取った高田航輔副社長とPOYO、参画したばかりのチームメンバーに話を聞いた。

「WWDJAPAN」(以下、「WWD」):ビジネスのあり方も、ブランドのスタイルも、組織まで生まれ変わった。

高田憲男ディーアンドエー社長(以下、高田社長):数年前から厳しかったが、コロナで「とどめを刺された」。でも、「とどめを刺される」わけにはいかなかった。まずは通常営業さえ難しかった直営店からECにシフト、一番手っ取り早かったZOZOで直営の閉店で落とした売り上げを補いはじめた。ZOZOでの売り上げは、1年で3倍くらいになって「ひと段落」。そこで少し放置していた、ブランドとしての「ティティーアンドコー」の改革を始めた。POYOさんに出会ったのは、昨年の夏頃。ZOZOで売ったコラボアイテムが好評だったし、何より本人にガッツや向上心がある。「なんとかしないと」と考えるうち、「任せてみよう」と思うようになった。スタッフは、大改革の最中で出入りが激しかった。今のチームメンバーは、大半が昨年の11月から今春にかけて入社している。

「WWD」:「ティティーアンドコー」の生みの親として、そんな新しいチームによるリブランディングに複雑な想いはなかった?

高田社長:ブランドが生まれたのは2008年。まだまだ赤文字、109やルミネでのビジネスなどは、自然に広がる時代だった。昭和生まれの僕は、直営店メーンのビジネスを手がけてきた。でもECは自然には広がらず、仕掛けることがたくさんある。でも、自分にはわからない。わからないなら、わかる人にやってもらうしかない。一方、商品については「おじさん」でも、経験や感性でわかるところがある。それぞれ役割分担できると思った。でも今は、どんどん僕の仕事を受け継いで欲しい。

「WWD」:大きな責任を託されたチームを担う気持ちは?

高田航輔副社長:社長のように突出したものがあるわけではないので、優秀な人たちに入ってもらい、働きやすい環境づくりを意識した。トップダウンで引っ張るのではなく、みんなの意見を聞き、みんなで作り上げていく。だからみんなが生き生き働けるようにしたい。

POYOディレクター(以下、POYO):社長は、私たちのやりたいコトを尊重してくれる。「『ティティーアンドコー』のお客さまは~」と語り出して否定せず、私たちの「これって、かわいくないですか?」に反応してくれる。例えば「ティティーアンドコー」にはフレアスカートのイメージがあるけれど、今はマーメイド。私もフレアが好きだけどマーメイドを押すと、「いいね、やってみよう」と背中を押してくれる。転じてくれる、融通の良さがある。

高田社長:ずっとトップダウンでやってきたが、正直もうやりたくない。僕は疲れ、みんなは意見を言わなく・言えなくなる。今は、自然にミーティングが生まれ、皆が意見を出し合っている。すごく新鮮な光景で、嬉しかった。

「WWD」:チームメンバーは、それぞれどうして入社した?

本間翔子プレス:転職活動中に求人を見た。アパレルでのプレスの経験はなかったけれど、ずっとやりたいと思っていた仕事。もともと知っているブランドで、楽しそうな会社に見えた。実際一人ひとりの裁量が大きく、大変だが、やり甲斐も大きい。お客さまを招いたはじめての展示会は、本当に“はじめてだらけ”だった(笑)。公式サイトへの集客やインスタライブも未経験だったが、若手社員が“参戦服”として洋服を発信するなど、自由に発想できる。

後藤和也販売促進担当(以下、後藤販促担当):「ティティーアンドコー」で働き始めたのは昨年、まだ大学4年生だったとき。広告代理店から内定をいただき、インターンとしてインフルエンサー・マーケティングに携わっていたが、自分じゃなくても出来そうな仕事に思えてしまった。色々探している中で、アパレルでもインフルエンサー・マーケティングができるのでは?と考えた。展示会でのモデルキャスティングは、ほとんどが自分の考え。「ここまで任せてもらえるの?」と嬉しくなった。

高田副社長:各々がやりたいこととマッチするか?を考える採用に切り替え、自分なりの意見がある人を探すようになった。ビジネスSNSの「Wantedly」での採用は、目からウロコだった。職種や条件ではなく、「こんなことを目指している人」「共感してくれる人」を探すことができる。

「WWD」:とは言え、未経験者ばかりのチームは、大変そうだ。

本間プレス:まず、プレスの先輩がいなかった。何もかも「前例がない」ことで、教えてもらうという経験が一切なかった。

POYO:私がディレクターの仕事に“飛びついた”のは、昨年の12月。「サンプルは1カ月くらいで揃うだろう」と2月の展示会を目指したが、考えが甘かった(笑)。「旧正月は、こんなに何も動かないなんて!」と痛感した。

後藤販促担当:展示会の準備とルックブックの撮影は、忘れられない。展示会はずっと社内で開催していたと聞いていたが、リブランディングの節目だったので社外で開きたかった。提案すると社長は「いいね、会場探しといて」と言ってくれたけれど、「会場を探すのは、僕なのか」と焦った(笑)。会場のレイアウト、モデルの交渉など全てが同時進行だったけれど、終わったときの達成感は大きかった。入社前だったのに。

POYO:タフなネゴシエーションには、社長に入ってもらった。毎日が、文化祭の準備をしていたようなカンジ。作ることの楽しさを体感していた。

高田社長:社外での展示会は、本当に良かった。抽選で当たったお客さまの中には、九州から上京してくれた方も。22年春夏の売り上げは、1年前と比べて130%くらいで推移している。合格点。ただ3月にオープンしたECなど、試行錯誤は今も続いている。

「WWD」:今後の予定は?

POYO:秋冬は9月の展示会を目指している。8月には洋服が揃って、推しの品番で撮影できるようスケジュールを立てている(笑)。パワーアップして、もっと多くの人に手に取ってもらいたい。

高田社長:最初は学園祭のような一体感が良かったが、やっぱり会社。経験はまだまだ足りない。それでも新しい、自由な発想が出てくるのは本当に良いこと。経験して、理解できたら、僕は業務を任せることができる。もう現場で監督兼4番バッター兼エースではいられない、いるわけにはいかない。

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