イギリス発の「ダンヒル(DUNHILL)」が2023年春夏コレクションを発表した。伝統と革新を大切にする同ブランドは、長い歴史で培ってきたテーラリングを振り返りながら、素材とディテール、機能性を現代的にアレンジ。今を生きる男性に向けた新たなワードローブを提案する。
革新的な素材がまとう
新たなエレガンス
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デジタルプレゼンテーションは、1900年代のアーカイブに着想したアンブレラコートで開幕した。当時のシルエットはそのままに、重みのある素材を防水性と防シワ効果を持つ超軽量のウールシルクでアレンジ。動きに合わせて軽やかになびき、現代的なエレガンスを生み出す。一部のテーラードジャケットやカーコート、ボンバージャケットには柔らかなラムレザーを使用。身頃の脇をナイロンで切り替えたり、インナーに軽量のシルクメリノニットを合わせたりと、アクティブなムードを加えた。モダンな素材使いの一方で、グログランテープやエポレットなどメンズの王道であるミリタリーのディテールを豊富に採用し、既存のワードローブにもよくなじむ。
カラーはネイビーやライトグレーなどシックなワントーンをベースに、ベージュやサンド、サマーキャメルといった夏を彷彿とさせる色調を差し込む。車のインテリアに着想して、くすんだイエローやブラウンなどの色気のあるカラーも採用した。
ウエアに加えて、新たなレザーシリーズ“1893 ハーネス”を発表した。ブランドのオリジンである馬車用のレザーグッズにインスパイアされたシリーズで、アイテム全面に使ったしなやかなフルグレインレザーと洗練されたシェイプ、品のある金具使いが特徴だ。マルチストラップのトートバッグをはじめ、ボディーバッグやクラッチバッグなどをそろえる。
クリエイティブ・ディレクターの証言
WWD:今シーズン大事にしたアイデアは?
マーク・ウェストン(以下、マーク):今シーズンは、“軽さ”と“動き”のアイデアを繰り返し登場させた。チームと共にエレガンスを再定義しながら、コレクションを軽やかに体現することに挑戦したかったんだ。テーラリングと機能性、革新性に根ざしたメゾンの伝統を振り返りながら、クラシシズム(古典主義)、シンプルさ、そして現代の男性的なコードをバランスよく取り入れたワードローブを提案する姿勢は、クリエイティブ・ディレクター就任時から変わらない。
WWD:“伝統と革新”も欠かせないキーワードだ。今回の“革新”はどんな部分?
マーク:暑い季節にふさわしい軽さと通気性を実現した、より細かなディテールだ。ミッドウェイトのレザーアイテムから超軽量のウールシルクまで、豊富なラインアップを夏場のワードローブとして選べるようになっている。それらに、コンシールベントやレーザーカットのパーフォレーション(空気孔)など、考え抜かれたデザイン要素によって、機能性と快適性を与えた。目立たないけれど、発見したらワクワクする。そんなディテールが詰まっている。
WWD:来年のアニバーサルイヤーに向けてどんな準備を進めている?
マーク:単なる回顧ではなく、新たな定義として祝うために、多くのエキサイティングなことを計画している。未定の部分も多いが、もう一度フィジカルな形でロンドンのルーツを紹介し、インパクトを与える機会を持ちたいと考えている。これからの「ダンヒル」がどんな存在になるか、期待を胸に探っていきたい。
「WWDJAPAN」編集長が
コレクション映像を見ながら徹底解説
数々のファッション誌を中心に活躍するスタイリストの井田正明と、「WWDJAPAN」編集長の村上要が、コレクション映像をもとにコレクションを徹底解説。ファッションのプロの目には、コレクションはどう映ったのか。
馬具から紡いだブランドヒストリー
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「ダンヒル」は1893年、アルフレッド・ダンヒル(Alfred Dunhill)が父の馬具製造会社を受け継いでロンドンに誕生した。馬具作りのノウハウを生かし、当時ブームだった自動車のアクセサリーやドライバー向けのアウターウエアを開発。その高度な技術力をメンズウエアとレザーアクセサリー全般に活用し、今ではグローバルで支持されるブランドへと成長した。クラフツマンシップを大切にしながらも、常識にとらわれないクリエイションに挑む姿勢は、伝統と革新、保守と前衛など、英国文化が持つ二面性そのものを体現している。
「ダンヒル」お客様窓口
0800-000-0835