REPORT
ガリアーノが本当の意味で帰ってきた。
ジョン・ガリアーノが「メゾン マルジェラ “アーティザナル” デザインド バイ ジョン ガリアーノ」を手掛けるようになって1年。この1年は、ガリアーノの“過去の”カリスマ性ゆえか、熱狂者が多い“マルジェラ”ファンからの期待の重さからか、時に息苦しいほどの緊張感がショー会場に漂っていた。しかし今回は違った。「マルジェラ」とのマリアージュは軽やかで見ていて心地よいものとなり、フィナーレには観客の本気度が伝わる力強い拍手が続いた。
今回も“コラージュ”を核にしたデザインであることは変わらない。国、民族、時代、ジェンダー。あらゆる要素がひとつの服の中で共存している。リアルとシュール、ビンテージとハイテクといった要素を、それぞれの主張させながら共存をさせている。違いを認めながら共存。その発想は、まさにマルジェラ的であり、ガリアーノ的。そして今の時代に求められている発想だ。
音楽はシャンソン歌手、エディット・ピアフの「La petite boutique」。優しい声が、服の世界観を後押しする。
タイ・ミャオ族のコットン、3重にして使うジョーゼット、ジャカード・オン・ジャカード、フィルクーペとチェックのフラネル。さらに、韓国のごく薄い“紙”やビンテージTシャツの切れ端。ハンドメードのレースには、盆栽や蝶が描かれている。スモーキングジャケットのバイアスカットのガウンに写し取る技は“ゴーストテーラーリング”と名付けた。
パーツひとつひとつを宝物のように取り扱い、組み合わせている。抽象画家がキャンバスに向かうように、どの生地をどこにどう組み合わせるかは、ガリアーノ次第だ。ガリアーノの美意識に忠実に組み合わせられた結果、その組み合わせやバランスを見ていて心地よいと感じる。まるで絵を眺めるように着る人も見る人も服を通じて彼の感性を味わう。そんなコレクションが出来上がっている。
ただし、これらは2つと同じモノを作るのは難しいオートクチュールならではの作品でありアイデアの原液。これがこの後、プレタポルテ「メゾン マルジェラ」へと展開してゆく。その流れも確立され始めている。